【ドラフト2024】長身高校生投手はなぜ16人も指名されたのか? 広島5位・菊地ハルン(身長2m)の場合
高身長投手の指名が相次ぐ!広島5位の200センチ・菊地ハルンを育てた指揮官が語る指名につながった夏以降の成長
今年のドラフトで2位以内の上位指名された高校生投手は、日本ハムドラフト1位の柴田 獅子投手(福岡大大濠)、同2位の藤田 琉生投手(東海大相模)、阪神2位の今朝丸 裕喜投手(報徳学園)の3人だった。彼らには共通点がある。柴田が189センチ86キロ、藤田が198センチ96キロ、今朝丸が188センチ80キロ――。すべて高身長なのである。 【動画】菊地ハルンの剛速球と鋭いフォーク!! ちなみに広島は5位で200センチ110キロの菊地 ハルン投手(千葉学芸)を指名している 今年計32人の高校生投手が指名されたが、185センチ以上の高身長投手はじつに16人。半数を占めている。 この兆候は昨年のドラフトから感じられた。楽天は3人の高身長投手を指名したのだ。 2位 坂井 陽翔(滝川第二)186センチ84キロ 3位 日當 直喜(東海大菅生)190センチ100キロ 7位 大内 誠弥(日本ウェルネス宮城)191センチ77キロ この流れは今後も加速していくだろうと考えた筆者は、昨秋、千葉学芸の高倉伸介監督に連絡をとった。同校には身長200センチの菊地ハルンがいたからだ。 中学時代は控え投手だった菊地は、高校入学当初のストレートは120キロ台。体作りを経て、高校2年春には最速141キロ、そして高校2年秋には146キロまでに速くなっていた。しかし、試合を投げ切るスタミナはなく、変化球はカーブだけ。試合を作る投球術もまだまだ。まさに“未完の高身長投手”の表現がぴったりだったのだ。 だが高倉監督は、すでに昨年のドラフト直後から「すでに何球団か菊地の練習を見たいといっています」と語った。12球団は「高身長投手」のリサーチに動いていたのだ。
高校生投手ではトップの評価
晴れてプロ注目選手となった菊地ハルン。高倉監督は「3年夏にピークを持っていく」指導を行った。そのかいあって3年夏には最速149キロを計測し、夏の千葉大会では、10回を投げて、11奪三振、4失点。スライダー、フォーク、カーブを器用に操る投手に成長していた。 夏は県大会4回戦で敗れ去った菊地だが、スカウトの調査は続いた。 実際夏以降も、菊地は大きな成長を続けた。専属トレーナーのもと体作りを行い、体重102キロから110キロへ増量、安定して145キロ前後の速球を投げるようになったのだ。 ドラフトが近づき、調査書は7球団から届いた。 「7球団の中でも広島さんと日本ハムさんからは特にいいお話をいただきました。 広島さんとの面談では担当スカウト・尾形(佳紀)さんから『今年の高校生投手ではトップクラス』という評価をもらいました。今だからこそ言えますが、『指名します』とも……。そのことは本人には伝えませんでした。広島と同じくらい熱心だったのは日本ハム。上司の方のクロスチェックもありました」(高倉監督) そしてドラフト会議。菊地は広島から5位指名を勝ち取ったのだった。 菊地は他の長身投手にはない器用さも評価につながった。 「肘の使い方がいいので、多彩な変化球も投げられる。長身にしては器用な動きができるところですね」(高倉監督) 菊地に限らず、日本ハム1位の柴田、2位の藤田も夏の大会で評価を高めた投手の1人。高倉監督は夏の大会での活躍度、そして夏が終わってからも成長度が評価のポイントになるとスカウトの会話、面談を通して感じたようだ。