日本が中国から学ぶべき国防における「習慣」
北朝鮮を「脅して」抑止できていない日本
飯田)確かに「抑止」という言葉は政策用語のような印象ですね。 奥山)上品な感じになりますが、相手に対して「そんなことをしたら大変なことになるぞ」という脅しではないですか。実は国防の核心にあるのは、マフィアやヤクザの世界と同じような「脅し」なのです。国防的にも日本は、常に「相手を脅して止める」ということを意識しなければなりません。しかし、我々はできていないではないですか。 飯田)できていませんね。 奥山)ミサイル防衛に関しても、ルトワック氏から「日本はしっかり北朝鮮を脅しているのか?」と問われたのですが、現状は「脅している」とは言えないですよね。
我慢を重ね、いきなりキレて第二次世界大戦を始めた日本
奥山)第二次世界大戦時にイギリス首相だったウィンストン・チャーチルは、『第二次大戦回顧録』を書いています。当時の日本との戦いを振り返って、「日本はいきなりキレてきた。日本人は外交を知らないのではないか」と言っているのです。 飯田)いきなりキレてきた。 奥山)イギリスと戦う前の時点では、「日本は何度も譲ってくれた。しかし、なぜ最後に怒って爆発するのか。日本人は不思議な国民だ。外交なのだから交渉すればいいではないか」とチャーチルは言っているのです。日本人は当時「我慢に我慢を重ねて、いきなりキレて戦争を始めた」と指摘しています。
「我慢を重ねて突然キレる」のは外交していないことになる
奥山)我々は北朝鮮や中国に対して、あるいは人質外交に対しても、何も言わないではないですか。「我慢を重ねて突然キレ出す」という形になれば、これは外交していないことになってしまいます。 飯田)国際的にはそう見えてしまう。 奥山)日本は騒がずに我慢して我慢して、いきなりキレる。そうなると、外交する上で困ると思います。 飯田)人と人の関係でも、こちらが譲っていれば、相手も意図を汲んでくれると考えがちな部分がある。 奥山)「察してくれ」など。 飯田)お互い譲り合おうという暗黙の了解がありますね。
外国から見れば奇妙に見える日本のメンタリティ
奥山)しかし国際的には、こちら側が勝手に思っているだけです。 飯田)日本国内では通じるかも知れませんが、国際的には手を挙げなければ、何も意見や要求がない人に見えてしまう。 奥山)高倉健さんの映画がそうです。譲って譲って、最後にいきなりキレるパターンの映画があるではないですか。メンタリティ的には、あの映画に近い。普段から「そういうことはやめて下さい」と言えばいいのに、我慢してしまう。そして……。 飯田)「堪忍袋の緒が切れた!」と。
中国の「相手に文句を言う」習慣を身につけるべき
奥山)突然キレる状態は、外国からすると「奇妙に見える」ということです。「なぜ前から言わなかったのだ」と言われてしまう。 飯田)チャーチルの時代は、軍縮会議などで「いいですよ、日本が譲りますから」と言っていたのに、突然キレて……。 奥山)戦争になった。ここは中国から学ばなければいけないところです。我々も「相手に対して文句を言う」という習慣を身につける必要があると思います。メッセージを発信しなければいけない。そのためには、「日本人はいつもキレている」という状況が大事ではないかと思います。 飯田)いつもキレているくらいの方がいい。