マセラティ「110周年イベント」で見た栄枯盛衰ブランドの超希少車たち
■販売トップもクラシック・マセラティのオーナー 「歴史に名を刻む貴重なクルマを見ることができ、各車両の状態の美しさもさることながら、これだけ多くの日本のオーナー様がマセラティを長く大切に愛してくださったことを改めて実感できた日でした」 マセラティ ジャパン代表取締役であり日本・韓国統括責任者の木村隆之氏は、会場でそうスピーチした。 木村氏自身も、1989年の「ギブリ」を少し前に購入しており、「それなりに手はかかるけれども、あの時代のマセラティへの憧れが強かったので、楽しんでます」と笑顔でコメントしてくれた。
木村氏のギブリ購入に関して、同じように(ショートデッキのクーペボディ、ウッドのダッシュボード、ゼニアのシート地、金色のアナログ時計などに)憧れていた、という声も多く聞かれた。 販売のトップが、このようにふた昔ぐらい前の車両に乗り、それが周囲から評価されることが、日本市場における“マセラティブランドの浸透”の証明なのかもしれない。 カロッツェリア・ピニンファリーナ在籍中に「クアトロポルテ(2004年)」や「グラントゥーリズモ(2007年)」といったマセラティ車のデザインを手がけた、奥山清行氏(KEN OKUYAMA DESIGN代表)も会場にかけつけ、短くも温かい祝辞を送った。
また、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン会長の越湖信一氏、モータージャーナリストの吉田拓生氏、先の木村氏によるトークショーも行われ、午後になると千葉へ向かって100kmを超えるツーリングへ。そして、参加した車両で巨大なトライデントのマークを描き、ドローンによる空撮でしめくくられた。 ■電動化時代に進むマセラティ 戦前はレースで名をはせたマセラティ。戦後はアメリカ市場を中心に、大きなエンジンを搭載した豪華なクルマづくりで収益をあげてきた。
それでも、品質面で問題があったり、エンジンパワーにシャシーが追いつかなかったりと、冷静な目でみるとドイツ車には太刀打ちできない時代もあった。 新開発のV6エンジンを搭載する「MC20」が登場して、SUVの「グレカーレ」が出て、そのあと最新世代の「グラントゥーリズモ」と「グランカブリオ」とラインナップが拡充した今は、以前とは比べものにならないほどクオリティも上がり、ファン・トゥ・ドライブの面でも図抜けた性能ぶりを示すようになった。
バッテリーで走るフォーミュラE選手権においても、2024年3月の東京グランプリではマセラティMSGレーシングが勝利をものにして、電動化へ向かう時代にあっても存在感をアピールする。 自動車におけるブランドの維持がどれだけ大変で、同時に価値あることなのか。このところの日本におけるマセラティの活動が、それをはっきりとわからせてくれているように感じられた。 【写真】ヒストリックモから最新モデルまで美しい歴代マセラティを見てみよう(99枚! )
小川 フミオ :モータージャーナリスト