防災意識向上へラジオ奮闘 避難訓練はほとんど実施せず インドネシア・アチェ州
【バンダアチェ時事】インドネシア・スマトラ島沖地震とそれに伴う津波で大きな被害が出た同島最北端アチェ州の州都バンダアチェでは、地元ラジオ局が住民の防災意識向上のための取り組みを続けている。 ただ、住民の避難訓練はほとんど行われておらず、20年前の災害の教訓を継承する上で課題となっている。 地元ラジオ局は、今も番組終了ごとに「地震が起きたら高い所に避難を」といったメッセージを流す。局幹部のハリス・ファディラさん(54)は「津波被害の後、局内に防災を担当する部署を置いた。局が主催するイベントでは、必ず防災コーナーを設けている」と強調した。防災番組も定期的に放送し、住民の啓発に努めているという。 一方、避難訓練は広がっていない。バンダアチェ沿岸部の村でこのほど、児童・生徒ら約150人が津波を想定し、近くにある3階建ての避難ビルに逃げ込む訓練が実施されたが、学校単位で行われたのは初めてだった。参加した中学1年の男子生徒は「今まで避難ビルに来たことはなかった。訓練に参加していなかったら、違う場所に逃げていたかもしれない」と話した。 大津波発生当時の副村長で、現在も村の顧問を務める男性(50)は「住民の訓練は、避難ビル完成直後の2008年に実施したきりだ」と明かした。この地域では訓練などの際、参加者に菓子を配るのが慣例となっており、そのための予算がネックになっているという。