「アレルギー患者」増加の一方で専門医不足の謎 「僅か2.5%」内科医に占めるアレルギー専門医
花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、アレルギー患者が増えている。しかし、患者が増える一方で、日本アレルギー学会の認定専門医が内科に占める割合はたったの3%未満だといい、全国で「アレルギー難民」が発生しているという。 自身もアレルギー患者で父を蜂アレルギーで亡くしている医療人類学者の著者が、5年以上かけて調査・執筆したテリーサ・マクフェイル氏の『アレルギー:私たちの体は世界の激変についていけない』の日本語訳が刊行された。花粉症や喘息、アトピーなどのアレルギーと闘う医療関係者や患者に取材を重ね、アレルギーの全貌に迫る「アレルギー大全」とも言うべき書だ。 【写真を見る】知られざるアレルギーの全貌を解説した新刊書『アレルギー:私たちの体は世界の激変についていけない』
「『アレルギー』のような正確な医学知識をベースにした本が普及することは、すごくいいことだと思います」と語る鈴木慎太郎・昭和大学医学部准教授(医学教育学)は、医療現場で日々患者と接する中で、アレルギーをめぐる医療体制についてどう考えているのか。前編に引き続きお届けする。 ■食物アレルギーや花粉症が増えている 日本の学校保健会の調査では子供の食物アレルギーは、20年間で数倍に増えています。また、アメリカの国勢調査のデータによると、成人の食物アレルギーは、10人に1人程度が発症していると報告されています。
40~50代以上の方は、子供時代、学校に食物アレルギーの同級生がいたかと聞かれると、すぐに思い浮かばない人が多いでしょう。嫌いなものを残す子供はいても、アレルギーのために給食のメニューが別だったり、お弁当を持ってきたりという光景はほとんどなかったはずです。 今と比べて本当に少なかったのか、きちんと診断されることなく独り隠れて困っていたのかもしれません。 ところが現在は、そういった子供が、100人当たりで少なくとも数人、1学年に2~3人はいるという時代になりました。
アレルギー疾患が増えた大きな要因は十分に解明されていませんが、その1つは、花粉症、アレルギー性鼻炎の増加と私は推察しています。 アレルギーは、アレルゲンが体内に何度も入ってきて、IgE抗体ができてしまう「感作」が起きて発症しますが、この過程が、以前は、食べ物なら胃腸で、皮膚の症状なら皮膚でしか起こらないと思われていました。 ところが、研究によって、いろんな経路、いろんな発症パターンが多様に入り乱れていることがわかってきたのです。