変わりつつある『大学』の位置付け。日本サッカーの大きな問題は「19歳から21歳の選手の育成」
10年で1000人以上のサッカーファミリーを生み出す価値
今後の目標は、日本代表選手を一人でも輩出すること。私の人生を振り返ると、日本代表として学んだことは非常に大きいです。だからこそ、指導する選手たちにも日本代表を経験してもらいたいという思いが強いんです。それが私の大きなモチベーションとなっています。もちろん、チームとして関東大学リーグで優勝したいという思いもありますが、そのためにもチームの総合力をもっと高めないといけない。まずは個の能力を高めていくことが重要だと思っています。選手たちを成長させて、日本代表に選ばれるような選手が出てきてもらいたい。 そう思っているのは、私だけではないでしょう。大学で指導する監督・コーチならば、誰もが考えていることだと思います。実際、プロの指導者が指導するチームが増えており、リーグ全体のレベルが年々上がっています。伝統校だけでなく、我々のような新興校の台頭もあり、競争力も高まっています。そうした切磋琢磨がリーグのレベルをさらに高めているように感じています。 ただ、このままでいいわけではありません。世界と日本の差は決して縮まっていません。むしろ、世界の成長速度に後れを取っているところがあります。だからこそ、より危機感を持って、伝統を大切にしながらも、イノベーションを繰り返していくことが大学サッカーにも求められていると思います。 日本のスポーツ界、日本のサッカー界をメジャーにしていくために、スポーツのやり方やあり方を見つめ直すことが必要ですし、スポーツの役割は何かというところを問いかけ直さないといけないと考えています。そして、スポーツは社会にとって必要なのか、必要ではないのかと考えた時にスポーツが必要だということを多くの人に理解してもらわないといけない。だから、サッカー経験者を増やすことが大事なんだと私は考えています。サッカーを理解する人が増えれば、『必要だ』と言ってくれる人が増えるわけなんですよ。それが日本サッカーの未来を作ることにつながっています。 東京国際大学としてチームの強化だけでなく、普及という点にも力を入れているのはそれが最大の理由です。サッカーの輪を広げるために、東京国際大学は部員の枠を作らず、希望者全員を入部させることにしています。4年合計約350人の大所帯のチーム編成となっているのです。我ながら、すごい人数だと思います(笑)。毎年100人以上が入部してくるので、10年で1000人以上のサッカーファミリーを生み出していることとなります。 すべての選手がプロの選手になるわけではありません。大事なのは、すべてのカテゴリーの選手がサッカーを好きであり続けること。卒業後にJリーグの試合を見に行くようになり、将来的に結婚をして子どもができた時にサッカーをさせて人口を増やしていってくれれば、サッカーはメジャースポーツに近づいていきます。注目度が上がることによって、見る人たちの目が肥え、批評が生まれます。スポーツにおいて厳しい目は強くなるための秘訣でもあるんです。その目を養うためにも、経験者を増やすことが大切です。サッカーはどういうスポーツなのかを知ってもらうために、まずは経験してもらいたいんです。サッカーが上手でなくてもいいんです。一人でも多くの人にサッカーを経験してもらって、いろんなことを学んでもらうことが、日本サッカーの未来にとって、ものすごく大切な要素になると考えています。 普及活動はすぐに結果が出るものではありません。成果が表れるのは10年後か20年後かもしれません。でも、短期的なものではなく、長い目線で見ていく必要があると思います。ワールドカップで優勝することはそんなに簡単ではありません。なぜ、ブラジルが強いのか。サッカーが国民に浸透していて、日常にあるからなんです。それが強さの秘訣だと思います。一人でも多くサッカーを経験する人を増やすことが大切なんです。そして、サッカーを文化にしていくことが大事なんです。それをこの大学でやっていきたいんです。 (本記事は竹書房刊の書籍『東京国際大学式 「勝利」と「幸福」を求めるチーム強化論』より一部転載) <了>