変わりつつある『大学』の位置付け。日本サッカーの大きな問題は「19歳から21歳の選手の育成」
大学がサテライトリーグの役割を担う
現在、日本サッカーにおける大きな問題は、19歳から21歳の選手の育成だと言われています。ヨーロッパのスカウトは主にこの年代を見ていると言いますし、その年代で試合経験を積むことが選手の成長にとって非常に重要なのです。でも、高卒でプロに入った選手がその大事な時期に試合経験を積めず、成長が停滞してしまうというケースが後を絶ちません。 Jリーグ創設から2009年までサテライトリーグという2軍戦のようなリーグ戦をJリーグとして運営していたのですが、日程調整や経費の問題などを理由に廃止となってしまいました。ヨーロッパではトップチームのほかにU-21やU-23などの若い選手主体のチームを作って、リーグ戦を行うことによって試合経験を積ませています。 日本の場合、その役割は大学になると思います。日本サッカーが強くなるためにも大学サッカーのレベルを上げていかないといけない。そして、優秀な指導者と良い環境が整備されていないといけない。だから、これからスポーツシューレのような施設を大学が作っていく時代になっていくのかもしれません。東京国際大学はそうした時代を先読みして、環境を整えてきました。その成果をこれからさらに発揮して、日本サッカーのレベル向上に貢献していきたいと思っています。 大学はプレーヤーとしてのレベルを高めるだけでなく、それ以外のいろんな研究をする環境も整っています。そういう意味でも、大学の位置付けはこれから大きくなっていくと感じています。我々の時代の大学と全然違う。たとえば、サッカーではラグビーや野球の「早慶戦」のような盛り上がりはありません。でも、東京国際大学をはじめ、いろんな大学が力をつけている。そこがすごく面白い。伝統だけでは勝てなくなっています。そういう競争が激しくなっていることは進化の証です。大学サッカー全体のレベルが上がっていることを私はすごく嬉しく思っています。
大卒の選手が日本代表に選ばれ、海外でも活躍できる時代
かつては高卒でプロにならないと、海外で活躍して日本代表に入るのは難しいと言われていましたが、最近は三笘薫選手をはじめ、大卒の選手が日本代表に選ばれるようになっていますし、海外でも活躍できるようになっています。 グローバル化が進む今のスポーツ界は世界から評価されないとダメだと思っています。我々の時代のような日本だけで完結していた時代とは異なります。当時の日本代表の選手でも、世界で通用する力を持つ選手はいたと感じています。でも、当時は日本から海外に出ていくようなルートがなかったですし、そういう状況でもありませんでした。 なので、当たり前のように海外に行ける今の選手たちがうらやましいですよ。三笘選手も大学時代から『いい選手』だと思っていたら、プロ入り後すぐに海外に行ってしまいました。現在、日本人は世界的に評価を高めているので、日本代表に入っていなくても、海外からオファーが届くようになっている。海外のスカウトから見られている状況が、選手たちの意識が高めているように感じています。頂点が見えるところにあったら、頭打ちになってしまいますよね。でも、今はいくらでも上に行くことができます。大学から世界への道は確実に舗装されてきているのです。 FIFAワールドカップ・カタール2022に出場した日本代表の登録28選手中9人が大卒選手でした。大学の影響力は着実に大きくなっており、大学サッカーは転換期を迎えていると思います。プロへの道も、高体連からユースへ、それから大学卒へと変わってきています。そういう新たな時代のために、大学はどうしていくか。より日本サッカー界を支えるという意味で、大学の位置付けはこれからもっと大きくなると思います。それはサッカー界だけでなく、スポーツ界全般に言える事だと思います。大学サッカーがもっと脚光を浴びるようになると、日本サッカーはもっと変わってくると思います。