机の上のサイエンス。/ジンカイト
人間の産業活動から偶然生まれた鉱物標本。
アメリカのニュージャージー州のフランクリン鉱山、スターリングヒル鉱山やナミビアのツメブ鉱山など、ごく限られた場所でしか産出例がない鉱物「ジンカイト」。主成分である亜鉛を意味する「ジンク」からその名がついている。このジンカイト、天然のものはほとんど流通していないが、その代わりにユニークなエピソードを持つ人工結晶が流通している。それが今回紹介するポーランド産のジンカイトだ。ポーランドでこのジンカイトが偶然生成されたのである。その原因は諸説あり、工場の煙突内で亜鉛の精錬や塗料製造の際に出た蒸気が偶然結晶化したという説や、亜鉛鉱山が火災に遭った際に生成された、という説もある。いずれにせよ、人間の産業活動の中で偶然生まれた副産物的な鉱物だ。天然の美しい結晶を探すのはかなり難しいが、ポーランド産のジンカイトも、そのストーリー込みで非常に魅力的。非常に高い分散率を誇り、まばゆい輝きを放つ美しい鉱物だ。 自然や科学の世界に潜む、息をのむような機能美を身近に感じるためのエトセトラを紹介。
photo: Akira Yamaguchi text & edit: Shogo Kawabata 2024年7月 927号初出
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