異例の“殺伐系”朝ドラ「虎に翼」。だからこそ、伊藤沙莉の「可愛げ」に注目せよ!
朝ドラの魅力の基準は何か?
NHKの朝ドラ「虎に翼」が序盤を終えようとしている。反応を探ってみると、オーソドックスだという声がある一方で、らしくないという声もあり、朝ドラ観は人それぞれだなと改めて思わざるをえない。 【写真】別格女優・芦田愛菜に死角はあるか…?“無双14年”から見えてくる未来像 では筆者にとって、朝ドラの魅力の基準は何かといえば「可愛げ」だ。ヒロインはもとより、物語や演出などにこちらが親しみや微笑ましさを感じて幸せになれるかどうか。ダイジェストも含めれば週6日、朝に放送されるドラマだけに、そういうものが特に大切だと考える。 その点、前作の「ブギウギ」も前々作の「らんまん」も及第点。「ブギウギ」には音楽モノならではの親しみやすさがあり「らんまん」には夫婦愛の微笑ましさがあって、半年間、幸せな気持ちにしてもらえた。 そして今作、ヒロイン役が伊藤沙莉に決まったときには、なるほどと思ったものだ。 伊藤には独特の「可愛げ」があり、そこに目をつけたのだなと。たとえば、ちょくちょく取り上げられるエピソードに子役時代に出演した「女王の教室」(日本テレビ系)で主役の天海祐希から励まされた話がある。 本人いわく、 「もう、私の中でずっと宝物ですね。『あなたはカメラが自分に向いてないときでも、必ずしっかりお芝居をしている。いつか誰かが見つけてくれるから、手を抜いたり気を抜いたりしないで。あなたは素敵だから、ずっとそのままでいて』って、それだけは守ってきました」(「しゃべくり007」日本テレビ系) というエピソードだ。 子役とはいえ、美少女系の扱いではなかったため、 「メインを張って真ん中に立つ人は、きれいじゃないといけないんじゃないのかなと思っていたところがあったんです。容姿だけで、視界に入れてもらえなかったこともあって、それが嫌だった」(クランクイン! ) という彼女。それもあって、天海の言葉はひとしお励みになったのだろう。 そんな伊藤の「可愛げ」が最もよく発揮されたのがヒロインを演じた「いいね! 光源氏くん」(NHK総合)。2020年に全6回で放送され、翌年には全4回の続編も作られた。 こじらせ気味の地味なOLの前に、光源氏が時空とフィクションの壁を超えて出現。恋におち、おたがいが変わっていくという物語だ。光源氏を演じたのは千葉雄大で、その甘いマスクやキャラと、伊藤のちょっとビターな声という取り合わせも絶妙だった。 そう、彼女の個性のひとつが低音のハスキーボイス。好悪の分かれやすいところだが、女性を敵に回しにくいという利点がある。高音のミルキーボイスがあざとさを感じさせるのに対し、サバサバとしたイメージをもたらすのだ。 実際には自らを「粘着質」だと評したり、占い師に「あなたは人間ではなく、妖精」だと言われたことを本気で信じているような「不思議ちゃん」なところも持っていたりするが、あの声としゃべり方でほどよくカムフラージュされる。 2年前、18歳上の劇作家・蓬莱竜太との交際を報じられ、本人も認める展開となったときも、世間の反応は好意的だった。芸人としてそこそこ売れている兄の伊藤俊介(オズワルド)が笑いにつながる助け舟を出してくれたりして、いろいろと「持ってる」人だなと思ったものだ。