ロシア籍タンカー2隻がケルチ海峡で難破、原油流出 少なくとも1人死亡
トム・ベネット、BBCニュース 黒海とアゾフ海を結ぶケルチ海峡で15日、ロシア船籍のタンカー2隻が荒天のために座礁し、原油が流出した。ロシア当局が発表した。 ロシアの南部運輸検察局が公開した動画では、タンカー1隻の船首部分が完全に折れ、海に油の筋が漂っているのが確認できる。 2隻のタンカーは漂流した後に、沖合で座礁したとみられる。少なくとも乗組員1人が死亡したと報じられている。 事故が起きたケルチ海峡は、ロシアと、ロシアが2014年に一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島の間に位置する。 救助活動には複数のタグボートやヘリコプター、50人以上の人員が投入された。1隻のタンカーから乗組員13人が救出されたが、救助活動はその後、悪天候のため中断された。 もう1隻には乗組員14人が残されている。船内には「緊急の生命維持に必要なもの全て」があるというが、天候が回復するまで身動きが取れない状況は続くとみられる。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ヴィタリー・サヴェリエフ副首相をトップとする事故対処作業部会の設置を命じた。当局は刑事過失があったとみて捜査を進めている。 海運専門誌「ロイズリスト」のアナリスト、ミシェル・ボックマン氏はBBCに対し、2隻のタンカーはヴォルガタンカー社が所有するもので、比較的小型だと説明した。 ロシアのタス通信は、ロシア当局者の話として、2隻はそれぞれ、約4300トンの原油を積載していたと伝えている。 ボックマン氏によると、ロシア産原油の国際取引に使用されるタンカーは一般的に、約12万トンの積載能力がある。このことから、事故を起こしたタンカーは、ロシアの河川や沿岸水域における原油輸送に使用されていた可能性が高いという。 ケルチ海峡はロシア産穀物の主要輸出ルートで、原油や燃料油、液化天然ガスの輸出にも使用されている。 2007年には、ケルチ海峡で停泊していた別のタンカーが嵐の影響で真っ二つに折れ、1000トン以上の油が流出した。 ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、ロシア産原油の輸入は、ウクライナの同盟国によって厳しい制裁の対象となっている。 ロシアは近年、整備不良で適切な保険に加入していないタンカー、いわゆる「幽霊船」を使って原油を輸送し、制裁を回避していると非難されている。 ただ、ボックマン氏は、今回の事故を起こした2隻は、「幽霊船」の一部ではないようだとしている。 追加取材:ジョシュア・チータム (英語記事 Two Russian oil tankers wrecked in Black Sea)
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