新生児ケアの臨床現場 仮想空間技術で再現 聖隷クリストファー大など教材開発
生後28日以下の赤ちゃんを看護する新生児ケアの教育に役立てようと、浜松市中央区の聖隷クリストファー大は、聖隷三方原病院(同区)、パソコンメーカー「レノボ・ジャパン合同会社」(東京)と協力して仮想空間の技術「XR(クロスリアリティー)」を使った教材の開発を始めた。ケアの手順を撮影した映像をVR(仮想現実)ゴーグルで体験することで、実践の場が少ない臨床現場を再現し、本番に近い形で学習できる。 2024年12月上旬、聖隷三方原病院で同大、同病院とレノボ・ジャパンの関係者がケアの撮影に臨んだ。3台のカメラに囲まれながら、看護師の中村佑佳さん(30)が生後4日の女児のバイタルサイン測定、おむつ交換などをこなした。赤ちゃんの人形を使って黄疸(おうだん)計の間違った使い方も実演。3台のカメラは中村さんの目線に近い視点と女児の両端に構え、さまざまな角度からケアの様子をとらえた。中村さんは「(臨場感ある映像で)座学よりも学びやすいと思う。現場の雰囲気がイメージしやすくなる」と話した。 XRは、VRやAR(拡張現実)といった技術の総称。スマートフォンの画面上でCGのキャラクターを浮かび上がらせる映像技術や、遠方の観光地を360度楽しめる疑似体験などさまざまな形で普及している。 同大によると、新生児の減少で実習機会が減っている点や、病院によってケアの教え方などが異なるため、直接体験に近い学習環境の整備が急務だった。看護やリハビリを学ぶ学生のほか、初産の家庭を対象にした親子講座で生かしたい考えだ。 教材は1月下旬ごろに完成し、同大の授業や保護者向けの育児講座などで活用する。同大リハビリテーション学部の矢部広樹准教授は「仮想空間を生かした教材を開発することで臨床の現場と教育をつなぎ、医療の発展に役立てたい」と意気込む。
静岡新聞社