晴れて大家さんデビューするも…「塩対応の不動産管理会社」に募る怒り。なぜこんなことが起こるのか?【不動産専門弁護士が解説】
「管理会社は何の力にもなってくれない!」と怒っても…
賃貸管理会社への依頼は、概ね上述の(1)~(3)となるでしょう。 大家さんによっては「物件の近くに住んでいるし、清掃は自分でできるから、清掃業務は契約から外して」などと、依頼する業務を調整することもあります。 実はここからが本題なのですが、トラブルが起きた際、 「管理会社は何の力にもなってくれない!」 「いったい何をやってるんだ!」 と、管理会社の対応が悪いといって腹を立てる大家さんも多いのですが、そもそも契約内容上、賃貸管理会社が賃借人とのトラブルすべてを解決することなど、業務内容に含まれないのです。 トラブルの交渉代理業務は、法律上、弁護士の専権として定められており、実情としては「非弁行為」、いわゆる弁護士の専権を犯さないレベルで、大家さんのメッセンジャーとして働いて事態を収束に導く、というのが、賃貸管理会社のそもそもの立ち位置です。 大家さんのなかには「毎月の管理料を払っているのに、トラブルになったらシッポを巻いて逃げる!」などとお怒りになる方もいらっしゃいますが、むしろそれは過剰要求なのです。 本来、賃料の入金確認や設備管理について「大家さんが気にしなくていいようにする」ことが、報酬に対する賃貸管理会社の対価です。 トラブルになったときは弁護士への相談や対応依頼が選択肢ですが、細かいトラブルまですべて弁護士に頼んでいては、費用対効果的に難しくなります。そのため、原則、大家さん自身でトラブルを捌けるようになるのが理想であり、それが大家業の宿命ではないかと思います。
賃貸管理会社は、すべてのトラブルに対応するわけではない
繰り返しになりますが、賃貸管理会社はすべてのトラブル解決をしてくれるわけではありません。 基本的には「窓口」となる存在であり、それによって賃借人と直接連絡を取る必要がなく、日々の管理業務や賃料の振り込みも気にする必要がなく、設備が壊れても対応を任せられる…というのが管理会社のメリットなのです。つまり、トラブル全般について賃借人との調整を期待するのは、行きすぎだといえるでしょう。 管理会社が担えるのは、あくまでもメッセンジャーとしての調整の範囲であり、賃借人との揉めごとは、原則として大家さん自身で解決する覚悟が必要です。 賃借人との揉めごとを懸念されるのであれば、顧問契約を提案している弁護士事務所も複数あると思いますので、活用を検討されてもよいのではないかと思います。 とはいえ、日々の細かなトラブルについては、大家さん自身でも対応できるようにしていかないと、大家業はなかなか続けられないと思います。
大家業をするなら、トラブルと向き合う気構えも必要に
今回は管理会社との付き合い方について取り上げました。 初心者大家さんにありがちなのは、管理会社に過剰な要求をしてしまったことで管理会社と揉め、余計に対応が悪くなった…というケースです。 厳しいようですが、賃貸物件を経営する以上、さまざまなトラブルも起こってきます。トラブルを自分で捌けるようにならないと、そのたびに外部の弁護士を頼ってお金が出て行き、利回りも減ってしまいます。 そうならないためにも、トラブルと向き合う気構えや覚悟も、大家業には必要だといえるのです。 山村法律事務所 代表弁護士 山村暢彦
山村 暢彦
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