「スター・ウォーズ」に匹敵「キングダム 大将軍の帰還」:総まくり2024年
2024年もたくさんの映画が、私たち映画ファンを楽しませてくれました。ひとシネマのライター陣が、映画、動画配信サービスの作品から今年の10本、そして2025年への期待を語ります。 【写真】世界的にも珍しい〝善良映画〟の躍進 「Good Dreams」(井上竜太監督)の一場面
洪相鉉さんが選んだ今年の10本
「一月の声に歓びを刻め」(三島有紀子監督) 「マッチング」(内田英治監督) 「水深ゼロメートルから」(山下敦弘監督) 「違国日記」(瀬田なつき監督) 「キングダム 大将軍の帰還」(佐藤信介監督) 「SUPER HAPPY FOREVER」(五十嵐耕平監督) 「Good Dreams」(井上竜太監督) 「アイミタガイ」(草野翔吾監督) 「十一人の賊軍」(白石和彌監督) 「正体」(藤井道人監督)
日本でしか生まれない「Good Dreams」
〝フロンティア〟三島有紀子がサバイバーである自身を振り返り、クリエーターとして新しいストーリーテリングに挑戦した「一月の声に歓びを刻め」で始まった今年の日本映画は、市場で検証された自作小説を映画化するというIPビジネスのニューモデルを提示した内田英治の「マッチング」で新鮮さを加えた。そして果敢な実験性が目立つ山下敦弘の「水深ゼロメートルから」は、日本映画界でなければ存在しえない名匠の挑戦を見せており、まねすらできない個性を持った瀬田なつきの「違国日記」も、必ず覚えておくべき上半期の秀作である。 下半期はさらに豊かだ。ミリオンセラーシリーズの佐藤信介の「キングダム 大将軍の帰還」は、日本にも「スター・ウォーズ」に匹敵するブロックバスターシリーズがあることを証明し、対極的な五十嵐耕平の「SUPER HAPPY FOREVER」は、常に海外のシネフィルを驚かせる日本インディーズ映画から登場した秀作。〝善良映画〟の躍進も世界的に珍しい現象。「地域密着型ヒーロー」を登場させた井上竜太の「Good Dreams」のような作品が、日本以外で生まれるだろうか。差別化される感動ストーリーとは何かを示した草野翔吾の「アイミタガイ」も善良映画のマスターピースだ。白石和彌の「十一人の賊軍」は東京国際映画祭のオープニング作品にふさわしい規模と作品性で、「日本型ブロックバスター」が立派に成立していることを誇示した。そして、収穫に満ちた2024年の仕上げは、感動スリラーの藤井道人「正体」。世界的な映画興行、作品不振の中で奮闘するジャパンムービーは、このように筆者を「MOVING」させているのだ。
洪相鉉