須藤寿インタビュー「須藤寿 GATALI ACOUSTIC SETってヴァン・ヘイレンみたいなもの」
――さっき「ノンポリ」っていう言葉がありましたけど、須藤くんの場合は「結果的になんとなくノンポリ」なわけではなくて、「メッセージとして意味を持ちそうなもの」「カッコよく見えそうなもの」を意識的に避けるという形で意識的に作り上げたノンポリですからね。 そうなんですよね。そういう性分なんでしょうね。でも、SNSとかを見てて、しっかりとした意志を持って発言しているタイプのアーティストを見て「お、カッコいいな」と思うんですよ。「そういうふうにうまく表現できるんならいいね」って。そういう人を見て、羨ましいなと思う側面もあるんですけど……自分は違うなというか。それは歌詞とか曲にも出てきちゃってる気がするんですけど。小学生の時、友達と喧嘩しちゃった時に、まったく関係なかった別の子が、ふと自分の心のオアシスになることがあるみたいな感じですよね(笑)。すごく遠い友達で、たまに帰るのが一緒になる程度の子が、話してるとなんかすごく気がラクになって、心の拠り所になることがあるじゃないですか。そんな人間であれたらいいのかな、っていう気がするんですよね。疲れちゃった時に、「こういうのもいるよ」って。はっきり物事を主張するのも、とても大事なことだと思うんですけど、まったく逆のこともとても大事なことのような気がするんですよ。「何も言わない」っていうのも、同じぐらい主張があるような気がしていて。ある時から、そっちの方が自分の性に合ってるなと思うようになって。もちろん、人間だから、何かを強く思うことはあって、たまに「これSNSで言っちゃおうかな?」とか「言っちゃって明日後悔しないかな?」とか思うんですけど(笑)。僕はどちらかと言うと、言わずにそっとしておいて、時間が経ってから「あ、こいつ実は主張してたな」っていう、ふんわりとしたニュアンスを持ちたいとは思ってます。それはズルさとも違うような気がして。 ――意味や主張、メッセージを発信するための音楽も、それはそれでいい作品もたくさんあるけど、須藤くんは髭でもGATALIでも「無意味の意味」的な音楽を追求してきたわけで。意味に囚われると、意味が音楽の主役になってしまう。そうじゃない音楽とは?というのを考えた結果の無意味なわけで――なかなか説明が難しいんですけどね。 そうなんですよね。でもなんか、まさにそういう感じだと思いますね。 ――だから今、須藤くんが「GATALIをやるタイミングだと思った」というのは、今の時代感を見ても納得がいくんですよね。 うんうん、そうですよね。なんか、何も終わっちゃいないと言えば終わっちゃいないんでしょうけど、明らかに一旦終わった感じがしますよね、僕としても。だから、GATALIの動き時というか、みんながフラットに、いい雰囲気になってきたんじゃないかなと思いますね。 ――ということで、結果的に6年半ぶりの新作になった『離島東京』ですが。「離島」という曲もありますが、このキーワードはどういうところから? これもフィーリングかなあ? 『離島』の歌詞を書き終わった時に――これはケイタくん(ケイタイモ)の曲で、僕が『離島』の歌詞を書いて。非常に夏らしい、気軽な曲ができていいね、と思ってて。言葉の響きとかが気に入ったんですよね。『じゃあ、これを軸とした雰囲気のアルバムタイトルにしようかな』って」 ――「離島」っていうと悲しげなイメージですけど、すごく朗らかでハッピーな曲ですよね。 そうですね。ケイタくんならではの感じで。今回のアルバムはアイゴンさん(會田茂一)も作曲に参加してくれてるんですけど、「ひとり2曲ずつ持ち寄ってやろうか」みたいな感じだったんですよね。「離島」と「Exit Club」がケイタくんで、「オノマトペ」が亮介(長岡亮介)で、「(My Name is)CAMPFIRE 」と「ことづけ」がアイゴンさんで、「あうん」と「アンブレラズ」が俺っていう感じで。そんな感じの曲集を作ろうか、っていう感じだったんですよね。なので、アルバムっていうよりは、自分としてはコンセプトミニアルバムみたいな――ミニアルバムっていうと語弊があるのかな? そういうコンセプトだったんですよね。「みんな曲書けるから持ち寄ってみようよ」っていう感じだったんですよね。