「親御さんが死にかけたとき、治療は必要ですか」…入居前に介護職員が投げかけた、家族の”覚悟”を問う質問
2015年に厚生労働省が出した統計によれば、日本人が亡くなった場所は病院、自宅の次に、「介護施設」が多くなっている。治療に特化した病院でもなく、住み慣れた自宅でもない「介護施設」で亡くなるとはどういうことなのか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル 介護アドバイザーとして活躍し、介護施設で看・介護部長も務める筆者が、終末期の入居者や家族の実例を交えながら介護施設の舞台裏を語る『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』(髙口光子著)より、介護施設の実態に迫っていこう。 『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』連載第18回 『「入居者さんのため」と言って“虐待”を続ける職員…「思いやり」が「憎悪」に変わる、恐ろしき『介護ストレス』とは』より続く
揺れる家族の思い
お年寄りが施設に入居されて最初のうちは、ほとんどの人がまだまだ元気な状態です。 カラオケで歌うことが大好きで、 「今度氷川きよしのコンサートに行くんだ」 と自慢している意気盛んなおばあさんもいれば、 「ここの飯はまずい」 「ワシはこんなところに来たくなかったけど、嫁に無理やり入れられたんだ」 などと達者な口で言いたい放題のおじいさんもいます。
家族の知識や覚悟の度合いをとらえる
本人がそんな状態なのにいきなりターミナルケアの話をされても、家族はピンとこないかもしれませんが、私は入居に際した面談のとき、 「いきなりで申し訳ありませんが、いざというとき、突然聞かれると迷われると思うので、今あえて聞いておきます」 と前置きした上で次のような質問をしています。 「急変時には救急車を呼びますか、呼びませんか?」 「食べられなくなったときに、チューブ(胃瘻や鼻腔栄養などの経管栄養)を入れますか、入れませんか?」 「チューブからの食事も吸収できないほど弱ってきたときに、水分や栄養補給のための点滴をしますか、しませんか?」 など、これから家族が直面する可能性がある問題を、具体的に問いかけてみるのです。