【週末映画コラム】『エイリアン』の“その後”を描いた『エイリアン:ロムルス』/各国の映画祭で注目を集めた心理ホラー『映画検閲』
【週末映画コラム】『エイリアン』の“その後”を描いた『エイリアン:ロムルス』/各国の映画祭で注目を集めた心理ホラー『映画検閲』 2/2
『映画検閲』(9月6日公開) 1980年代、サッチャー政権下のイギリス。「ビデオ・ナスティ」と呼ばれた暴力シーンや性描写を売りにした過激な映画の事前検閲を行うイーニッド(ニアフ・アルガー)は、容赦のない冷徹な審査故に「リトル・ミス・パーフェクト」と呼ばれていた。 ある日、イーニッドがいつも通りに作品をチェックしていると、あるホラー映画の出演者が、幼い頃に行方不明になった妹のニーナに似ていることに気付く。 妹の不可解な失踪といまだに向き合えていないイーニッドは、不気味なホラー映画と、その映画の謎めいた監督の背後にある真実を突き止めることを決意するが、次第に虚構と現実のはざまへと引きずり込まれていく。 長編映画はこれが初監督となるプラノ・ベイリー・ボンドによる心理ホラー。サンダンス映画祭など各国の映画祭で上映されて注目を集めた。 劇中に流れるホラー(ゴア、スプラッター)映画、それを再生するVHSテープとビデオデッキとブラウン管テレビ、あるいはフィルムと映写機、そして闇レンタルビデオ店(ダビングテープ)の存在など、「ホラー映画の過激な描写は青少年の人格形成に有害」と言われた80年代当時の映画(ビデオ)事情の一端を再現している。 また、映画検閲官を描いた映画は珍しいので、その仕事ぶりは興味深く映ったが、虚構と現実の交錯描写が曖昧過ぎて、残念ながら見終わった後にもやもやした感覚が残るのは否めなかった。 そんなこの映画を見ながら、80年代中ごろ、『人喰いエイリアン』(84)や『悪魔のオペ』(74)といった、劇場未公開の低予算ホラーやアクションものを中心にビデオ化した「MIMI」というレーベルがあったことを思い出した。 (田中雄二)