JRAに異例の「農水省から厳しい指導」 もはや裁決裁定は“現場の心情”とは別の次元に進んでしまった【競馬】
◇中央競馬記者コラム「ターフビジョン」 昨年連続した調整ルームと通信を巡る不祥事は、賞罰が行き着くところまで行った感がある。調査への虚偽回答とか、偽装工作による持ち込みといった、不正直な振る舞いに対して裁決委員や裁定委員会が厳しく臨んだのは当然だった。一方で、12月に節内移動中のYouTube利用が摘発された件は、規定通りといえばその通りだが、一部に四角四面な運用に過ぎると感じる人がいるのも分かる。 通常であれば「JRAの裁決の姿勢やいかん」という軸で議論され、われわれも論を立てるところではある。しかし、ことは既に別の次元に進んでしまったのではないか。 11月に騎手3人(この件で1人引退)が摘発された件で説明にあたった赤井誠公正室長は「(農水省)競馬監督課から厳しい指導を受けている」と、監督官庁の意向が具体的に影響していることをうかがわせた。競馬は現場の専門性が大きい業界だ。サークル内の懲罰に関しても原則、各主催者の裁決委に大きな裁量を任せている。裁決委の領分に監督官庁が具体的に口を挟むのは異例とも言える。 しかし官僚からすれば、自分の監督業界で不祥事連発とは最悪の部類に入る悪夢だ。強く出るのも責められない。 こうなるともはや“現場の心情”など無意味だ。この種の不祥事が昔話になるまで完全に封殺できるよう、サークル内が一致して当たるほかない。 (若原隆宏)
中日スポーツ