フルタイムで働くアラフォーママがまさかの保育士試験を受験することに⁉【作者に聞いた・後編】
転職を余儀なくされ、再就職を目指して事務員として面接を受けた保育園で勧められた保育士試験。2人の子どもを育てるワーママが、国家資格取得を目指して奮闘する様子を2回にわたってご紹介。事務員から保育士へというぽてとさんのライフシフトにまつわるストーリーの後編です。 【もっと写真を見る】
2人の娘の出産や育児の話に加え、転職や求職を含め自身の仕事にまつわるエピソードを漫画にしてブログ「ぽてとのマッチョ保育士漫画」やInstagramで発信しているぽてとさん。2度目の転職先となった保育園事務の面接で、園長の勧めから保育士試験を受験することに。後編となる今回は、筆記試験と実技試験はどんなものがあるのか、そしてどのように勉強、対策をしたかなど、具体的なエピソードをご紹介。無事、合格を果たしたその後の様子などもご本人に聞いてみた。 顔に大きなニキビができるほどの追い込み勉強! 果たしてその結果はいかに⁉ 保育士試験は前期・後期と年2回実施され、筆記の「保育原理」「教育原理」「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」「保育の心理学」「子どもの保健」「子どもの食と栄養」「保育実習理論」に加えて、「造形」「音楽」「言語」と3分野ある実技試験から2分野を選択する。 「筆記試験は9科目あり、合格した科目は3年間有効という制度があるため、この制度を利用して2~3年の長期で受験する方が多いようです。ちなみに、一発合格は全体のわずか5%ほどだと言われています」 第1回目の試験は、前期・後期の全国試験とは別に一部地域で実施されている地域限定保育士試験を受験したぽてとさん。保育士試験の結果は5科目合格し、「教育原理」「社会的養護」「子ども家庭福祉」「子どもの食と栄養」が不合格という結果に。 「どうしても受かりたかった難しい教科に落ちてしまったと同時に、受かると思っていた教科も落ちてしまいました。自分的には7教科合格を最低ラインで目指していたのに、5教科しか受からなかったのでショックと焦りを感じていました」 第1回目の試験後、解答速報で自己採点をして結果を知ったというぽてとさん。受験を決めてから5か月間、猛勉強をしたぽてとさんはその1日だけリフレッシュとしてダラダラし、また翌日から2か月後の2回目に向けて受験勉強を開始した。 「平日は2時間、土曜は5時間、日曜は家族の時間に充てていたので平日と同じ2時間ほど勉強していました。合計で週17時間くらいですね。基本は問題を解いて、知識を定着させるという繰り返しでしたが、落ち着いて座って勉強することが難しい時も多々ありましたので、WEBやアプリの問題集を活用してスキマ時間に問題を解いていました。手が離せない時は暗記系の語呂合わせの動画を聞き流ししながら、食事を作ったり洗濯したりと家事をしていたことも」 〝絵を描く〟〝物語を聞かせる〟の実技試験もクリアし、晴れて保育士に! 努力の甲斐あって、見事2回目の筆記試験ですべての筆記試験に合格したぽてとさんは、約2か月後に実施される実技試験の対策をスタートした。実技試験は、幼児に聴かせることを想定して楽器を演奏しながら歌う「音楽」、保育の一場面を絵画で表現する「造形」、3歳児が集中して聞けるような物語を話す「言語」の3科目。楽器が弾けないというぽてとさんは「造形と」「言語」を選択した。日ごろからブログで漫画を描いているぽてとさん、「造形」の試験はお手のものだったのではとたずねてみると。 「趣味で描く絵とは違い、試験で描く絵ですので、まずは合格者の方の再現絵をたくさん模写しました。合格者の方の絵から学び、真似ることにしたんです。さらに模写をした自分の絵を分析して足りないところを重点的に練習しました。肝心の試験ですが独特の空気があり緊張しまくりで(笑)。時間配分をミスしてしまい『ラスト5分です』と試験官に告げられた時は、まだ色を塗っていない箇所が多くて夢中で色を塗りました!」 45分の試験時間ギリギリではあったが無事、当日発表されたお題の絵を仕上げることができ、続くは「言語」の実技試験だ。複数人の3歳児が目の前にいることを想定し、課題の物語を3分間にまとめて話すというもの。ぽてとさんは4つあった課題のなかからノルウェーの昔話である「3びきのやぎのがらがらどん」をチョイス。YouTubeでアップされている動画を参考にして台本を作り、鏡を見ながら身振り手振りを交えて話す練習をしたとか。そして、実技試験は「造形」「言語」ともに各50満点中の40点を獲得し、晴れて保育士試験合格となった。 「絶対合格する!と決めて臨んでいたので、合格がわかった時は本当にうれしかったです。娘たちも喜んでくれましたし、夫は『こんなに勉強すると思わなかった』と言って、おしゃれなお店を予約(笑)。合格おめでとうと労ってくれました」 保育園事務としてフルタイムで働きながらの受験だったこともあり、この勤務経験が有利に働くこともあったという。 「保育園独自のルールがいろいろとありまして。例えば給食前に検食があること、月に一回必ず防災訓練があることは保育園の事務員の勤務経験でわかっていたので、問題に出た時は迷わず正解できてうれしかったですね」 そして、現在は保育士として働くぽてとさんは、園児たちがとにかくかわいく、日々の成長を見守ることに喜びを感じているそう。もちろん、その反面で大変なこともあるようで。 「体力も精神力も使うので毎日、勤務後は疲れ切っています(苦笑)。とはいえ、昨日までできなかったことが今日できた!とか、子どもの成長する姿をそばで感じられるのが本当にうれしくて。子どもたち一人一人が小さな体と心で一生懸命感じ、考えた末に行動して成長してゆく姿を、見守ることができるので毎日発見と感動があります」 転職、保育士試験ともに、突然ぽてとさんの人生に降ってわいたようなできごとではあったが、自身の努力で見事ライフシフトを果たした。そんなぽてとさんに、資格取得をしてみたい、新しい仕事を始めてみたいなどと考えている同年代の女性に向けてメッセージをもらった。 「アラフォー女性がライフシフトを考えるのは、結婚や出産、子供の自立など環境の変化がきっかけになるのが多いのではないでしょうか。 私は職場の移転に伴い通勤時間が長くなってしまったことで、転職を決意。これがきっかけとなり、改めて人生で大切にしてることはなんだろう?と自分自身を見つめ直しました。家庭とのバランスを考え、またやりがいのある仕事を求め、総合的な判断で保育士資格を取得して現在保育士として働いています。 保育士という職業は大変なこともありますが、やりがいや喜びの方が大きく、思い切って転職してよかったと心から思います。私と同じアラフォー女性さんのなかにはさまざまな理由、事情でライフシフトに悩まれてる方もいるかもしれません。でも自分の心に正直になって、真摯に決めた道を進んでゆけば必ず道は開けます。私もまだまだライフシフト中です。 共に励まし合いながら、楽しみながら進んでゆければと思っています!」 文● 杉山幸恵