伊豆諸島沖で墜落「海自ヘリ」に何が…「高度かつ複雑な訓練中だった」元操縦士が語る有事に備えた“知られざる”活動
「シミュレーターなどで何度も手順等を訓練する」
ただ、訓練中のヘリコプター墜落事故は過去にも起きている。2017年8月26日、大湊航空基地(青森県むつ市)に所属するSH60J哨戒ヘリコプター1機が青森県沖での発着艦訓練中に墜落。海外に目を転じれば、先月23日にマレーシア軍のヘリコプターがフォーメーション訓練中 に接触、墜落している。 事故防止策はどのように取られているのか。小原氏はこう語る。 「戦術訓練を実機で飛行する前には、シミュレーターなどを用いて何度も手順等を訓練しています。 またシミュレーターでは闇夜も設定でき、僚機が見えにくい状況の訓練も行われています」 機内では隊員同士が “チーム”として動くため、意思疎通が重要になる。「主にコックピットで前方や左右の目視による見張りを行うパイロット(操縦士)と、主にレーダー等のセンサーを用いて自機の周囲の捜索を行うセンサーマン(航空士)は、航空目標の探知についても常に共有しています」(小原氏)
「練度を維持することが根本的に重要」
自衛隊の存在の根拠となる「自衛隊法」。その第52条「服務の本旨」には、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえる(条文一部)」とある。 沖縄・尖閣諸島海域を他国艦船がひんぱんに航行するなど、日本周辺の状況は緊張が続いている。そうした中、泳力を高める水泳訓練から2国間・多国間の国際演習に至るまで、国民が日頃目にすることがない訓練が昼夜を問わず行われている。 小原氏は「訓練機会を維持し、搭乗員(操縦士および航空士)の練度を維持することが根本的に重要であると思います」と有事に備えて行う訓練の必要性を語る。 前出の酒井海幕長の談話は、最後にこう締めくくられている。 「海上自衛隊は、我が国及び周辺海域を防衛するとともに、望ましい安全保障環境を構築するための活動を、万全の態勢をもって遂行してまいります」
榎園哲哉