切り枝の産出額10年間で倍増 ユーカリやアカシア 結婚式でも、季節感演出
ユーカリやアカシアなどを含む切り枝(枝物)の市場が伸びている。2021年の産出額は花きの中で菊、洋ラン(鉢)に次ぐ3位の224億円に上り、10年間で約2倍になった。消費者の自然派志向に合うことや日持ちの良さで人気が高まる。産地では、労力や初期投資の低さを理由に他品目からの作付け転換の動きもある。 【グラフ】枝物の産出額推移 農水省によると、花き全体の産出額が直近21年は3519億円と11年に比べて4%減った中で、枝物は同87%増と勢いがある。 花き業界の専門シンクタンクの大田花き花の生活研究所(東京都大田区)は、枝物人気の背景に消費トレンドの変化を見る。13年以降は中小輪や草花などの自然派志向にトレンドが移り、枝物のユーカリのようなドライな質感やくすみカラーが好まれるようになった。同研究所は「日持ちが良く、自然や四季を感じられる素材そのままの雰囲気が人気を集める」とみる。 花桃など花を楽しむものの他、近年はドウダンツツジなど葉を鑑賞するものが販売を伸ばす。
婚礼や家庭用に
ブライダル業界でも広がりを見せている。結婚式の装花を年間約3万組手がける大手生花チェーンの日比谷花壇によると、どの季節でも人気がある「ナチュラルな雰囲気の式」では、森や庭園をイメージして枝物を使うことが多い。例えば、初夏から夏には3メートルほどの大きなドウダンツツジやアセビを高砂に飾って会場のシンボルにするなど主役として使う場面も増えている。 春には桜やミモザ、秋には紅葉したユキヤナギなど季節によって使う品目が異なり、同社の装花担当者は「枝物は季節感が出る。主役以外にも、グリーンの素材として多くの結婚式で使われている」と話す。 大手生花チェーンの青山フラワーマーケットなどが枝物だけを使ったブーケを定番商品化し、家庭向けにも定着してきた。
省力で転換進む
産地では、切り花や他の作目から枝物栽培への転換、遊休農地で新規作付けする動きが活発だ。静岡県のJA大井川では主力のユーカリや、花付きはミモザとして人気が高いアカシアを含め、6品目を生産。23年度の生産者は47人で、5年前に比べて約2倍になった。JAでは、茶の価格低迷を受けて枝物への転換が選択肢の一つになっている。また、主力の品目と複合で栽培する生産者もいるという。 栽培する利点は多い。露地栽培のため初期費用やランニングコストが少ない。切り前を気にせず長期間出荷でき、複合経営が可能。改植や防除回数が少なく省力できる。 JAの担当者は「アカシアは来年春に初出荷を控えている生産者もおり、出荷量はまだ伸びる」と話す。(菅原裕美)
日本農業新聞