わらぞうり作りや自宅で保健室……シニアの「人生二毛作」実践事例集
「キャリアを活かす」では、保健室の先生(養護教諭)だった68歳の女性(長野市)が退職後に自宅を開放して「川中島の保健室」を開設。3歳から80代までの相談者が「病院へ行くほどではないが、話を聴いてほしい」と、毎月30人近く訪れます。時には3世代で性教育を学びたいとの依頼もあり、勉強会も開きました。「相談者が帰るときに元気になれる場所」とコーディネーターが評価しました。 このほか「学びを活かす」では松本城をボランティアで案内するグループが26年も活動を続けており、現在の会員は65人にも。長野県のシニア大学で松本城の歴史を学んだOBを中心に輪が広がりました。代表の林喜代子さん(81)は「無理なく楽しく活動しています」。 不登校や引きこもりなどの若者らを退職教師らがサポートしたり、コミュニケーションの場とするカフェ「セジュール」は伊那市。代表の戸枝智子さん(59)は「誰にでも居場所と出番があるまちづくりを目指しています」とメッセージを寄せています。 体操やおしゃべりの仲間が集まったり(長野市)、街のにぎわいを取り戻すために商店主や地域の人たちがお茶を飲みながら談話を楽しむ喫茶室(飯田市)など、シニアの活動が広がっていることがうかがえます。
実践事例集は発行以来、地元メディアなどで紹介されたこともあってセンターの県内10支部のうち長野支部には市民やケアマネジャーなどから数十件の問い合わせや注文が相次ぎました。ほかの支部でも問い合わせが多く、中には大阪など県外からの連絡もありました。 長寿社会開発センターは「誰かに指示されたり、決まり事だからというのではなく個人もグループも自発的に取り組んでいくことに“二毛作”の基本があります。自分にできること、やってみたいことを自分のペースで始めることが地域や自分を楽しくさせていきます」と話しています。 「人生二毛作社会」の実現を目指す運動は、長野県が4年前からシルバー世代の就業や社会参加を狙いにアピール。高齢者に関わる組織や機関などが連携して推進することとし、そのきっかけづくりや支援のためにセンターにコーディネーターが配置されました。
-------------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説