『虎に翼』「優三さん役が太賀さんでよかった」主人公・寅子役の伊藤沙莉が怒涛の8週・9週を振り返る。印象深かったシーンは
また、第9週で、優三の死の知らせを隠していた父・直言(岡部たかし)が倒れ、寅子が発見してしまう。余命わずかな直言が、優三の死だけでなく、今までの数々の懺悔や正直な思いを家族の前で一気に吐き出す。あろうことか「花岡くんのほうがよかった」という告白までしてしまうのだ。 「この週はもう、感情がぐちゃぐちゃで。このシーンでは、寅子の気持ちを整理したくて演出の方に相談したんです。 なかでも『でも、お父さんだけだったよ……家族で女子部に行っていいって言ってくれたのは』というセリフを言うときは、寅子としてあふれてくる感情が、喜怒哀楽のどこに属しているのか分からなくなって。 感情の焦点をどこにも合わせられなくなってしまったんです。そこで『答えなんか出そうと思わなくていいよ、もうぐちゃぐちゃのままでいい』とアドバイスをいただいて。その通りに、あえて特定の感情に焦点を定めずに演じたからこそ、違和感のない自然な表現ができたと感じています。」 と、色々な気持ちが渦巻き、整理のつかないままもがく寅子と一体となった演技の舞台裏を語った。 そして、印象深かったシーンとしてあげたのが、昨日5月30日放送の第44回。母に「お父さんのカメラを売った。このお金で、心が壊れる前に贅沢をしてきなさい」と送り出される寅子。屋台で焼き鳥とどぶろくを頼むも、「おいしいものを一緒に食べよう」と言ってくれた優三を思い出し、手を付けずお金を置いて店を出た。そこへ店の女性が追いかけてきて、新聞紙につつんだ焼き鳥を渡してくれた。河原に座って優三を思い出しながら一人焼き鳥をかじる寅子。すると、その新聞紙には「日本国憲法」が書かれてあった。バックには「話題の歌入りの曲」がまた流れている。 「第1回(4月1日放送)につながる河原のシーン!優三さんの幻影に「トラちゃんができるのは、トラちゃんの好きに生きることです」と改めて励まされて、それと同時に新しい日本国憲法を手にするという、終わりと始まりがリンクするところが物語の造りとしてもおもしろいと思いました。続く10週からも、楽しんでいただけたらうれしいです!」 と、SNS等でも話題となった、ドラマ初回のオープニングシーンとのリンクを語った。 何か吹っ切れた寅子。優秀で、戦争前には帝大を目指しながらも「家族を背負うため働く」と言っていた弟には「自分の幸せのために大学へ行け」と諭し、自身は裁判官を目指す。「女性の権利拡大」だけでなく、「男も荷を下ろしていいんだ」というメッセージが込められている。 次週第10週からは、いよいよ寅子が新たな道へと踏み出していく。松山ケンイチが演じる桂場等一郎との再開、沢村一樹演じる久藤頼安との出会いなど、新たに踏み出した世界で寅子にどんなことが起こるのか。今後の展開も楽しみだ。
「婦人公論.jp」編集部
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