自民党「3戦全敗」なら岸田首相は絶体絶命か…東京・長崎・島根の「3補選」を占う
2024年4月28日に、東京15区、長崎3区、島根1区の補欠選挙の投開票が行われる。この3つの補選は、令和の日本政治において「決定的な転換点」になると言っていい国政選挙である。というのもこの3補選は、すでに2年半もの長期政権となった岸田文雄政権の命運を決するものだからだ。 【一覧】「次の首相になってほしい政治家」ランキング…上位に入った「意外な議員」 しかし一口に「3補選」とひとくくりにされるこれらの選挙も、それぞれの政党や地域の思惑がからんでおり、詳細な分析によって多様な側面が見て取れる。 投開票を前に、筆者は3つの選挙区を歩いてフィールド調査を行った。それによって、永田町における「政治とカネ」の問題が発端となった今回の補選が持つ「大きな意義」が見えてきた。各選挙区の現状を分析しつつ、マクロな視点から俯瞰してみよう。
大混戦の東京15区
9名もの候補者が乱立し、選挙妨害などの容疑も持ち上がっている東京15区。そもそも江東区長選挙における票の買収で、柿沢未途氏が議員辞職したことが補選のきっかけであり、ここでも「政治とカネ」の問題が関わっている。 ちなみに、柿沢氏の前にこの選挙区から出馬していた自民党の秋元司氏も、2019年にIRをめぐる収賄で東京地検に逮捕されている。その意味では、自民党にとって「いわくつき」の選挙区とも言えるだろう。「政治とカネ」問題への批判もあり、今回は候補者を立てることができなかった。 こうして「選挙違反」によって始まった東京15区の補選では、自民党候補の不在によって「野党の見本市」といった混戦に突入し、9人もの候補者が乱立する事態となった(以下、届け出順・敬称略)。 ---------- 福永活也(NHKから国民を守る党公認) 乙武洋匡(無所属、都民ファーストの会・国民民主党推薦) 吉川里奈(参政党公認) 秋元司(無所属) 金澤結衣(日本維新の会公認、教育無償化を実現する会推薦) 根本良輔(つばさの党公認) 酒井菜摘(立憲民主党公認) 飯山陽(日本保守党公認) 須藤元気(無所属) ---------- しかしながら、候補者の数が多すぎるあまり、現状では争点が拡散してしまって政策面での議論が深まってはいない。また自民党候補が不在で、かつすべての候補者が「政治とカネ」の問題を取り上げれば、事実上そこでは差別化できない。 選挙戦直前に小池都知事の学歴詐称疑惑が報道され、乙武氏の過去の女性スキャンダルも蒸し返され、加えて告示日の16日には、選挙妨害ともとられる行為まであった。 そのような状況で、乙武氏への支持は伸び悩み、代わって立憲の女性候補・酒井氏へと支持のシフトがおこった。さらに21日に投開票が行われた目黒区長選で都民ファの候補が敗北したこともあり、酒井氏がさらに優勢と見られる。