TikTokで人気! 芸歴20年を超えたラバーガールが賞レースとは違う道で見つけた居場所
◇東京03を近くで見ていたから“自分たちはこっち” ――動画投稿を始めて、ネタ作りに変化はありましたか? 飛永:確実にありますね。自分たちの芸歴や年齢も関係しているのかもしれないですけど、ライブでやるネタを作る機会がめっきり減りました。 大水:そうだね。たまにやる単独ライブのときに作るぐらいですね。 飛永:ちょっと前は自主ライブとかもやってたんですけど……ネタを作っても、それをテレビで披露する機会がまったくないので、 やる必要あるかな? みたいになって。だったら動画をアップしたほうがいいんじゃないか、と思うようになりました。 ――先ほど、時事ネタは常に考えているというお話もありましたが、ライブでのネタ作りはどうしていたんですか? 大水:ライブのタイトルから連想してネタを作ります。去年でいったら『インフルエンサー』っていうタイトルの単独ライブをやったんですけど、そこからどういうネタができるかを考えていく、みたいな。 飛永:単独ライブの構成のなかでネタを考えていく、という感じですね。僕たち、普段から“これはネタになりそうだな”っていう目線をもってるわけじゃないんで、単独ライブをやるってなったら、ネタを作るって感じです。“こういうお笑いがやりたい!”がそんなにないよね? 大水:うん。“絶対これをやりたい!”は、ないかな。 飛永:“スベってもいいから、自分たちがやりたいネタをやる”とかは絶対ないです。ずっと、東京03が近くにいて、人間関係のおもしろさを表現したコントをずっとやって、それで全国ツアーをやって、どんどんお客さんを増やしていくっていう姿を見せられたら、自分たちは違う道を行かないと!って思うんですよ。 “他の人がこうやるんだったら、自分たちはこっちかな?”みたいな決め方、僕らは多いかもしれないです。時代の流れがあったら、じゃあ自分たちなりに違うアプローチでやってみるとか。 大水:東京03は、三人ともネタをやっているのがすごい楽しいらしいんですよ。単独ライブ後も、“今回も楽しかった~”とか言ってて。すごくないですか?(笑) 僕らもネタを楽しんではいるんですけど、楽しいよりもしんどいのほうが勝っちゃうときもあるから、あそこまでハイペースにライブはやれないなって。 飛永:好きなこととか、楽しいことだから突き詰められてるんだと思うんですけど、東京03みたいな熱は僕らにない。むしろ、いかに効率よくやるか、とかは考えてるかもしれないです。だから、スピード感をもって更新していくことが重要な動画は、僕らに合っていたんだと思います。 ――面白いことはもちろん、並行して効率の良さも優先しているということですね。 飛永:僕はどっかで挫折をしてるんだと思います。お笑いで食っていくには、ネタもそうだけど、バラエティ番組に出ていくとなったとき、すごい人がいっぱいいる。“自分はあそこにハマる人たちとは違うな”という挫折があるから、“じゃあ得意なことはなんだ?”って考えた結果、今、こういう考えになったのかもしれないです。でも、大水さんは、テレビに出ることを諦めてないところもあるよね? 大水:なんて言ったらいいんだろうな……。僕は、YouTubeとかでネタをやるのも好きなんですけど、ほかの芸人さんとワチャワチャしてるのも好きなんですよ。営業とか行かせてもらったとき、その道中とか楽屋の雰囲気が好きなんです。 ◇『キングオブコント』に出る可能性は? ――近年は『キングオブコント』へのエントリーもされていないですが、個人的には2012年の準決勝で披露された「寿司屋」のコントが大好きです。 飛永:ありがとうございます。あのネタも、今はもうメディアではできないだろうなあ(笑)。 ――(笑)。キングオブコントに出られてないのも、動画を優先するための選択ですか? 飛永:いや、単純に勝てないんですよね。 言い訳に聞こえたら僕らを好きな方に申し訳ないんですけど、“もしかして求められていないのか…?”というか。 大水:若手の人は、大会に向けて、1年かけてネタを仕上げてくるけど、僕らはそういう感じじゃなくなってるんで。その熱量のなさが伝わってるんだと思います。 飛永:キングオブコントの予選、あんなに1ボケ目でスベるライブないよね(笑)。 大水:キングオブコントでやれそうなネタができたとしたら、出る可能性は全然ありますけど、 そこだけに向けてがんばるっていうのは、もういいかなって。そもそも、僕らはコントで一番になりたい!っていう熱い気持ちがないんですよ。おもしろい人がたくさんいて、それでいいじゃんっていう考えなので。だから、若手の頃は、出なきゃ逃げてる感じもあるし……最初から“出なきゃいけないなあ……”くらいの感じでした。 ――コンビを組んだときに思い描いていた将来と、現在のラバーガールはどんな部分が違いますか? 大水:今はこうして動画でも稼げるようになったりとかしてますけど、組んだときは、まずはネタ番組に出て、そのあとバラエティー番組に出て、という流れしか考えてなかったですね。あと、僕ら二人ともドラマとかにも出させてもらってるんですけど、それは想像してなかったな。 飛永:たしかに、昔はテレビのネタ番組がゴールデンタイムにあるから、ネタさえ続けていれば出られると思ってました。でも、だんだんメディアも多様化して、バランスが変わってきて、もう本当、なんでもやれないとヤバいんだなって。 ――なんでもやるからこそ、ほかに作用することもあるんですか。例えば、ドラマの現場で得たことをコントに活かすなど。 飛永 逆はありますね。ドラマに呼ばれる可能性があることを、コントに盛り込むとか。コントで、しっかりお芝居もできますよ!っていう要素を増やしたり(笑)。たとえば、『有吉の壁』(日本テレビ系)とかだったら、なるべくドラマっぽいコントをするとか、そういうのは他の人より上手にできると思います。 ――8月21日(水)には、人力舎の1年に1度のお祭りイベントとして『夏ネーター2024』が開催されます。5月から『人力舎ネタライブ「ルミナ」』も始まりましたが、こちらでは若手芸人の方と同じ舞台に立たれてましたね。 飛永 事務所のライブにずっと出ていなかったので、若手と絡むことがなかったんですけど、機会ができたのはありがたいですね。 ――お二人が注目している芸人さんを教えてください。 飛永 バローズっていうグループがいて、2年連続、事務所の若手ライブの年間チャンピオンになってるんですけど、コントが人力舎らしい、ちゃんとした感じっていうか。あんまり見たことない設定のおもしろいコントをやってるなとは思いました。これからが楽しみですね。 大水 僕は鈴木ジェロニモですね。短歌の本を出したりとか、おもしろい活動をしているなって思います。 (取材:梅山 織愛)
NewsCrunch編集部