大炎上〝中国人10年ビザ〟の外交悪手 観光公害、治安リスクは増大 媚中暴走「事前の根回し皆無」邦人拘束など懸案忘れるな
確かに経済効果は見込めるが、観光客が増えすぎて自然や街並みが損なわれたり、交通渋滞や混雑、モラルの低下などで住民生活の質が下がったりするオーバーツーリズムが社会問題化している。
経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「インバウンド促進派は経済効果をうたうが、観光に来ても中国人が経営するホテルや店舗などを中国人が利用すれば、身内の経済活動の領域として利用されるだけで日本が恩恵を受けない可能性も出てくる。〝経済の植民地化〟といえる」と指摘した。
「邦人拘束」など懸案忘れるな
為替の円安効果で高い宿泊費でもやってくる訪日客が増えることで、日本人の国内旅行者が悪影響を受けるとの指摘もある。
旅行ジャーナリストの大川原明氏は「円安のため訪日外国人は以前より割安に感じていると思う。中国人は団体旅行も多く、全国各地で宿泊費が上がっていくのではないか。京都など静かに落ち着いて過ごしたい人にとっては混雑で旅行を控える人も出てくるだろうし、今後のビザ発給次第でさらに拍車がかかるかもしれない」とみる。
治安の問題も浮上する。
公安関係者は「各国で中国人による犯罪やマナー違反が指摘されるなか、わざわざリスクを招き入れるドアを全開にした。治安面から考えてもあり得ない。中国人は国家へのさまざまな協力を法律で義務化されている。中国政府から『スパイ行為』を命じられれば断れない。今回の決定は安全保障の観点からも極めて危険だ。米国も、石破政権と中国の距離感に疑念を強めつつある」と話す。
日本と中国の間にはいまだ懸案が山積している。昨年3月に北京市内で中国当局によりスパイ容疑で拘束されたアステラス製薬の日本人男性社員も拘束が続き、非公開の裁判にかけられている。
中国は東・南シナ海周辺で海洋進出を強め、今月には沖縄県・与那国島南方の排他的経済水域(EEZ)で新たにブイが確認された。
前出の山上氏は「日本としては邦人の安全確保や、拘束中のビジネスマンを釈放させるなど取るべき対応はきちんと取るべきだ。岩屋氏もいまなぜ北京に行ったのか説明もない。石破首相とトランプ次期米大統領の間でいまだに関係が構築されていないなかで、本来、外相はワシントンに出向いて次期国務長官とすり合わせをするのが優先ではないのか。まず日米同盟を固め、日本の立場を強くしてから中国に臨むべきだった。外交の常道から外れた悪手を打った」と批判した。