『死霊の盆踊り RRR』と呼んでもいいかもしれません。【みうらじゅんの映画チラシ放談】『ボーはおそれている』『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』
みうらじゅんさんの前に近々公開される映画のチラシを大量にお持ちして、グッとくるチラシを厳正にピックアップ。映画本編は観ていないので事前知識はほぼゼロ、頼りになるのはチラシ内の情報(と妄想)だけという状態で語っていただく、言いっぱなしの映画チラシ放談です。(ぴあアプリ「みうらじゅんの映画チラシ放談」より転載) 【全ての画像】『ボーはおそれている』『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』
『ボーはおそれている』
――今回の1枚目のチラシは、『ミッドサマー』のアリ・アスター監督の最新作『ボーはおそれている』です。 みうら 『ミッドサマー』、そこですね。選んだ理由は。 ――みうらさん『ミッドサマー』の話はしょっちゅうしてますもんね。 みうら しょっちゅうしてます(笑)。このチラシ放談でも『ミッドサマー』を引き合いに出している映画はたくさんありましたけど、本家本元が満を持して登場してきたわけですからね。それにキャッチコピーも気になります。「ママ、きがへんになりそうです」ってどうです? きっと、なりそうじゃなくて、なることは間違いなしでしょう(笑)。 「ママ、きがへんになりそうです」って言ってんですから、このチラシに大きく写った人がパパってことですね。 ――確かにこの人、困った顔してますね。 みうら その肩に子どもらしき人たちが小さく乗ってますけど、この「ママ、きがへんになりそうです」の吹き出しを誰に持っていくかで、この映画の見方が変わってくると思うんですよ。やっぱ、パパがおかしくなる話だとみるのが妥当かと。 でもね、ここにはママらしき人が映ってないんですよ。たぶん、左にいる天使みたいなのがママなんじゃないですかね。ママはもうこの世にはいないのかも。ただ、「きがへんになりそうです」って丁寧な口調が気になりますよね。「ママ、きがへんになりそうだよ」とか「なっちゃうよ」でもいいのにね。 そこを考えるとこのパパは『サザエさん』でいうマスオさん的な位置にいる人ではないでしょうか? ――つまり「婿養子はつらいよ」って話だってことですか。 みうら ですね。となると、チラシに写ってるおじいさんみたいな人は、ママ側のお父さんだったり親戚だったりするわけで、やはりパパだけが孤立する話なんでしょうね。家主であったママがいなくなった以上、パパがこの家に住み続けるのはどうかとか? でも娘としては「この家にいてよ!」って言うでしょうしねぇ。 ――なかなかに辛い話ですね。 みうら まあママの実家は大金持ちなんでしょうね。ま、そこは『ミッドサマー』の監督ですから、当然、パパの病み方は尋常じゃないに決まってますよ。 ――『ミッドサマー』の監督、だけに。 みうら いろいろ周りから言われてね、パパとしても「この家にいたら気が変になりそうだよ!」ってなるでしょうし、自分の田舎に戻ろうかとも考えるわけですよ。当然、変な祭りをやってる村ですよね、そこ。 パパは、そこにママの親族をも連れ出す計画を立てますよね。僕の田舎で面白い祭があるから、ちょっと気分を立て直すためにもみんなで旅行に行きましょうよって、うまく誘い出して、とんでもないメに合わそうとね。 チラシの下にもあながち間違ってないことが書いてありますよ。「怪死した母のもとへ帰省」って。怪死って、実はこの立場がないパパが殺したんじゃないですか? こういうときは困った顔した人が一番怪しいですからね。そして親族も次々と怪死の原因である生贄祭りに連れていく。 ――パパ、けしからんですね。 みうら けしからん! 実にけしからんですよ。チラシに墓がふたつ並んで写ってますよね。 ――それぞれ墓石に「マザー」「ファーザー」って書いてます。 みうら なるほど。ママもパパも既にゾンビなんですよ。そう思って見ると、このパパ、顔色ものすごく悪いですよ。 ――ケガもしてますね。 みうら 『ゾンビ』&『ミッドサマー』、ということは『死霊の盆踊り』ってことですね(笑)。 ――だとしたらかなり核心を喋ってしまいましたね。 みうら なんならこのチラシそのものが遺影という可能性もありますよ。 それどころか、実はこの子たちのパパでもないんじゃないかな。死んだ人に乗り移って、養子として入り込んだのでは? 結婚詐欺ゾンビって新しいですからね。 ――ゾンビの結婚詐欺師とは、まだ観たことがない新機軸ですね!(笑) ちなみに上映時間が3時間近くあるそうです。 みうら えー⁉ 『RRR』級じゃないですか、結婚詐欺ゾンビ。 ――3時間がかりの『死霊の盆踊り』ですか? みうら 『死霊の盆踊り RRR』と呼んでもいいかもしれませんね。まあ、覚悟して観に行ってください(笑)。