名作落語に新風を吹き込む若手のホープ『柳亭小痴楽独演会』
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。 【水先案内人 山本益博のおススメ】 柳亭小痴楽は落語芸術協会の若手のホープと言ってよい。江戸っ子気質で『大工調べ』『両泥』はじめ、長屋物の噺が面白い。また、『岸流島』など、侍の登場する噺も得意としている。 この小痴楽の師匠は父である五代目柳亭痴楽で、早くして亡くなられてしまったが、その高座は洒脱で粋だった。 私が10代のころは、四代目柳亭痴楽の全盛期で「破壊された顔の持ち主」がキャッチフレーズ。「痴楽の綴り方教室」など、聴くたびに笑い転げた覚えがある。また、演題は忘れたが、押し売りが家にやってきて、家庭電化製品を次々に売り込む噺で、それを見事にやり返して追い返す場面は今でも忘れない。押し売りの男が、攻め立てて言う。「それでは奥さん、冷蔵庫?」「とっとく間(あいだ)に食べちゃうわ」。なんともリズム感が良かった!かつては、新作で笑わせた落語家が春風亭柳昇はじめ、大勢いたものだった。 小痴楽は古典派だが、名作の落語に新風を吹き込むことを期待したい。 <公演情報> 『柳亭小痴楽独演会』 2024年10月4日(金) 東京・千代田区立内幸町ホール 開場 18:30 / 開演 19:00