路面電車の軌道敷を横切る右折は怖い…鹿児島市で車との接触事故が増加 多発中の交差点には電車用の信号機なし
鹿児島市電の車両と車の接触事故が後を絶たない。市交通局電車事業課によると、4~8月に18件発生しており、前年度総数の23件に迫る勢いだ。全て、車が軌道敷を横切って右折しようとした際、右側を並走する電車とぶつかるケース。同課や県警の担当者は「右後方から接近する電車には特に注意が必要」と呼びかける。一方、市内の事故多発地点に着目した識者は、電車と車の信号を分けて設置する重要性を訴える。 【写真】右折しようとして市電と接触事故を起こした乗用車=鹿児島市中央町(画像は一部加工しています)
同課によると、時速30キロの電車が急ブレーキをかけ停止するまでの制動距離は31~36メートルで、約9秒を要する。末吉健治課長は「電車は急に止まれない。ドライバーは対向する車と電車だけでなく、右後方の電車にも目を配る必要がある。早く渡ろうという焦りも事故を呼ぶ」と注意を促す。 軌道敷を右折する際のルール順守と、ゆとりある運転も重要だ。県警交通規制課の持永洋文理事官は「道交法に基づき、軌道敷内は原則通行できない。軌道敷内に入って右折を待つのは非常に危険」と指摘する。事故を回避するには「右折時はウインカーを早めに出し、軌道敷の手前で確実に停止する。信号が青でも、対向する電車が過ぎるのを待つ勇気も必要」と話す。 市交通局によると、今年最も事故が多い場所は、中央町の中洲電停交差点。特に朝夕は混雑し、右折待ちの車が列を作る。武岡1丁目の無職女性(77)は「事故が怖くて、ここではいつも右折を避けている。線路を曲がる正しい方法がいまだに分からない」という。
同交差点について、関西大学経済学部の宇都宮浄人教授(63)=交通経済学=は、電車専用の信号機がないことに注目。市内には現在、専用信号は9カ所あり「事故を防ぐには、電車と車の信号を分けることが理想。交通量に応じて専用信号を増設するなど、制度作りが大切だ」としている。
南日本新聞 | 鹿児島