フェラーリ、ロングランの”一貫性”に手応え。しかしレッドブルのポテンシャルは不透明……「自分たちの立ち位置を把握している人は誰もいない」
先日までバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催されていたF1のプレシーズンテスト。総合のタイムシートでトップに立ったのは、フェラーリの2台だった。 【タイム結果】F1バーレーン・プレシーズンテスト テストでトップタイムを記録しただけでは、シーズンに向けて有望だとは言えないことを、F1チームもファンもよく知っている。しかしフェラーリには、シーズン中も速そうだという兆候もある。 バーレーンテストの総合タイムで最速だったのは、フェラーリのカルロス・サインツJr.が2日目に記録した1分29秒921だった。サインツJr.はこの時、C4タイヤを履いていた。 同日午後にレッドブルのセルジオ・ペレスが記録した最速タイムは、C3タイヤで1分30秒679。C4タイヤとC3タイヤのパフォーマンス差は0.6秒程度だと言われており、それを考えればサインツJr.のペースがかなり速そうだということが分かる。 またロングランでも、フェラーリの速さの兆候が見て取れた。2日目の夜、サインツJr.がレースシミュレーションを実施。57周を3スティントに分けて走ったが、この時同じようにロングランを行なったペレスよりも、常に速かった。C3タイヤでのサインツJr.のアドバンテージは0.4秒もあったのだ。 しかもこのレースシミュレーションを見ると、昨年のフェラーリの弱点のひとつだったデグラデーション(性能劣化)が解消されているように見えるシーンもあった。 サインツJr.はC1タイヤを履いた時、1分35秒台のラップタイムを19周にわたって続けた。つまり、タイヤのデグラデーションの兆候はほとんど見えなかった。しかもそのうち1周は1分34秒台に入れており、かなり良好なペースだったと言えよう。 このC1タイヤでの連続走行は、レッドブルよりも1周につき1秒以上速かった。ただこのことが、レッドブルのパフォーマンスを分かりにくくしている。 前述の通り、フェラーリのアドバンテージはC3タイヤで0.4秒だったのが、C1タイヤで1.0秒に拡大。このことは、ペレスが燃料を継ぎ足して走行しただろうということの証左となろう。バーレーンでは燃料搭載量が10kg増えると、ラップタイムが約0.3秒遅くなると言われている。そのため、ペレスがどれほどの燃料を積んでいたのかを読み取るのが難しく、比較を難しくしている。 とはいえ、フェラーリのフレデリック・バスール代表は、ロングランのペースに一貫性があったこと、そしてふたりのドライバーが進歩を感じられていることは、非常に心強いと語った。 「ロングスティントの話をする前に、最も重要だったのは、マシンの状態が良くなったというカルロスとシャルル(ルクレール)からのフィードバックだった」 そうバスール代表は語った。 「デグラデーションが小さく、一貫性がはるかに高くなったのだ」 「このことは、レースを戦う上で重要だと思う。しかし今は、純粋なパフォーマンスという点で、自分たちがどの位置にいるのかを正確に知ることは少し難しくなっている。燃料搭載量によって、いろんなことが変わるからね。だから相対的に自分たちがどのポジションにいるのか、理解できている人は誰もいないと思うよ」 そうバスール代表が言うように、各チームは自分たちが何をしているのか、ライバルに悟られないようにすることに注力している。それが特に見て取れたのが、金曜日のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)のロングランだった。 フェルスタッペンは金曜日に、数回のロングランを行なったが、マシンのポテンシャルを最大限に発揮することはなかった。おそらく、かなりの量の燃料を搭載していたのだろう。 その時のフェルスタッペンは非常に速く、とても安定していた。そして走れば走るほどにペースが上がる……つまりデグラデーションがマイナスだったこともあった。 そして興味深いことに、このロングラン中のフェルスタッペンのスピードトラップの通過速度が、比較的遅かったことも分かっている。つまりこの時のフェルスタッペンは、パワーが低いモードで走っていた可能性が高いと思われる。 フェラーリは、ドライバーの評価とロングランのデータにより、昨年から前進を遂げたことは間違いないだろう。しかしその一方で、レッドブルのパフォーマンスについては不確実な部分が残っている。 レッドブルは遥か先にいると思うか? そう尋ねられたバスール代表は、次のように語った。 「彼らが20kgの燃料を積んで走っていたのならば、我々は良いポジションにいると思う。しかしもし彼らが80kgの燃料を積んで走っていたなら、我々は遠く及ばないところにいる。それは、彼ら以外には分からない」 「しかし他のことをに集中しすぎると、決断の道筋を少し見失ってしまうことになる」 「チェックすべき項目と、行なうべきテスト項目がたくさんあったから、我々はそれに集中していた。でも、1週間後(開幕戦バーレーンGP)でその答えが分かるだろう」
Jonathan Noble