【特別連載】指名漏れ立命大・竹内が明かす「春10連敗」からの号泣裏側、日立製作所でプロ再挑戦
昨秋のドラフト会議では育成を含む123人が指名を受けた。脚光を浴びた選手たちとは対照的に、プロ志望届を提出しながら指名漏れを味わい、涙をのんだ好選手も数多くいた。スポニチでは、夢を諦めずに数年後の吉報を目指す選手に迫る連載「夢をかなえるまでは――」を始動。最終回は、立命大の強打の外野手・竹内翔汰(4年)に迫る。 ◇ ◇ ◇ 複数のNPB球団から調査書が届いていた立命大の竹内は、「いまも指名を受けた選手の記事を見るのは…」と複雑な心境を明かす。好選手そろう関西学生野球連盟で4年春に首位打者を獲得し、ベストナインは3度受賞。堅実な外野守備など総合力の高さは折り紙付きながら、大学生外野手に有力選手が多く縁に恵まれなかった。 「高校まではプロを目指せるような選手でもなかったのに、プロに行くんだという根拠のない自信はあった。4年間その目標だけはぶらさなかったです」 俊足巧打だった創志学園(岡山)時代から強打者に姿を変えて、プロ注目選手にまで成長した。人望も厚く、最終学年で主将に就任。しかし、最後の一年に屈辱が待っていた。 優勝候補と目されていた春季リーグ戦で大学史上初の10戦全敗を喫したのだ。新たに就任した片山正之監督が目指した堅実な攻撃が選手に浸透し切らず、投打の歯車が狂った。 光の差し込まないどん底に「主将を辞めたい」とまで思った。はい上がるための分岐点は、リーグ戦中に開かれた選手間ミーティングで訪れる。最も親交の深い副主将・大橋誠斗(4年)が涙を流して竹内に訴えたのだ。 「いま野球が楽しくないんでしょ? 俺には分かるよ。だから俺らをもっと頼ってほしい。俺らにもできることがあるから。悩んでいることがあるなら、何でも言ってほしい」 竹内は悩みを自分自身で消化していく性格だ。それでも親友からの涙の訴えを聞き、泣きながら心の内をさらけ出した。「野球が楽しくない。みんな、助けてくれ…」。そして夏場に選手同士で本音をぶつけ合い、絆を深めて秋本番を迎えた。 秋季リーグ戦は、勝っても負けても涙を流す熱い戦いを見せた。「春は独りぼっちの感覚だった。本気で勝ちたいのは僕だけなのかなと思った。でも秋は一戦一戦泣くほど全員が本気になってくれたことが嬉しかった」。秋季リーグは8勝6敗で3位。春の全敗から名門の意地を見せた。 ドラフト指名はなく、「何が足らないのか、2年後までのプランを考えた」と明かす。そして、長打力向上が必要だと結論づけた。 「安定した結果は大学で見せられた。でも“こいつ、やばい!”と思ってもらうには、2打席連発とかインパクトが必要だと思う」 卒業後は日立製作所への入社が内定している。好きな言葉は「諦めない」。10連敗も仲間と流した涙も、2年後に夢をかなえるための支えにする。 (河合 洋介) =終わり=