<上海だより>景気減速の気配なし?大規模な新開発はやはり止まらない
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ねじれ上がるデザインが独特で、中国で最も高く、世界的にもドバイにあるブルジュ・ハリファ(828メートル)に次ぐ632メートルという高層ビル「上海中心」が今年の3月に完工したことで、浦東の風景は一変しました。 上海だより
しかし、これまで浦東の主要な眺望スポットとされてきた対岸にある外灘からの角度では、上海中心はビル群の後ろ側にあり、やや存在感がありません。それを受けてか、外灘のメインスポットからやや南に下りた十六舗という埠頭からでは上海中心の全貌をはっきりと眺めることができるため、その近辺の大規模な開発が進められています。
この新開発地区は上海外灘国際金融服務中心(以下、外灘金融中心)という名称で、オフィス、セミナールームやビジネスラウンジ、ショッピングモール、アートセンター、そしてホテル機能を兼ね備えることが予定されている、巨大な開発地区です。主要な観光地である豫園と浦東を眺める十六舗の間に位置しており、まさに上海の真ん中でありながら今まで手付かずであった隙間に建造されています。
正直、ここ最近の上海中心部ではかつての新天地や南京西路エリアのような大規模な開発が目立っておらず、もしかしたら本当に好景気は減衰しているのかもしれない空気もありましたが、虹橋空港近辺で進んでいる大規模な地域開発に加えて、この南外灘エリアの外灘金融中心がオープンした際には上海の商業・オフィス地区の地図は大きく書き換えられることになるでしょう。
一方で、上海人にとってこの地域は、かつて上海最大の客船埠頭だった十六舗のイメージも根強く、上海人同士が冗談で相手をバカにする際に「あなたは十六舗から来たの?(他所の人ですか?)」という上海語の方言もあります。 確かに、外灘金融中心と豫園の間には、不思議なほどに庶民向けの古びた住宅地が密集しており、どこか異様な空気感も漂います。現在進められている新開発を受けてか、この古い住宅地エリアでも大規模な修繕事業が進められています。かなり広範囲に足場がびっしりと組まれ、見た感じでは町そのものが作り変えられているかのようにも見えます。
しかし、外壁の塗装や屋根の修繕こそされていますが、建物の内側はまだまだ古いままで、メガロポリス上海の象徴とも言える立地にあるとは到底信じられない様相です。以前にも、「光復里」という上海で最も高級な廃墟という内容もお伝えしましたが、この一本路地裏に存在する溝の感じが、今の上海を象徴付けているとも言えます。 おそらく、外灘金融中心の規模拡大もしくは別事業による再開発はすでに計画されており、今後はここに住む人たちも立ち退きを要求されるのだろう、この古い町並みは消えてしまうのだろう、とやや感傷に浸ってさえしまう、そんな上海の街角です。