SNS世代が陥りやすいキャリアの「正解探し」の罠、脱却を支援する際のポイントとは?
■ 風見鶏症候群 風見鶏症候群は、社会の中に正解があると思い込む人たちのことを言う。自分の軸や考えを持たず、周囲の状況を眺めて絶対解があると思い込み、自分の外にある正解に振り回され続ける人たちだ。 青い鳥症候群の人たちは自分の中に正解があるはずだと自分探しの旅に出るが、こちらは自分の外に正解があるため、社会環境によって影響をすぐに受ける。筆者がつくった造語であるが、風が吹くたびに向きを変える風見鶏の動きに似ていることから、風見鶏症候群と呼ぶことにする。 世の中が「Aが大事」と言えばAの方向に進み、「Bが重要」と言えばBの方向に進む。就活マーケットでは、よく「これから伸びるのは○○業界」「○○業界は衰退の危機」といったフレーズを耳にするが、このようなフレーズにいちいち反応して、動いてしまう人は、風見鶏症候群の分かりやすい例だと言えるだろう。 Z世代は子どもの頃から「口コミ」情報にあふれている。「多くの人たちは何を好んでいるのか?」「どの店に行くことが(外れの少ない)正解なのか?」を見つけることができる。つまり社会の風を感じ取りやすい状況にあると言えるだろう。これが行き過ぎると自分の五感で感じることよりも、社会の風を「正解」と置いたほうが間違いないこととなり、社会の風に振り回されるようになる。結果としてキャリアの正解探しに迷い込むことになる。 変化が激しく、すぐに風向きが変わる時代だからこそ人は不安になる。そして、自分の軸がない人は風見鶏症候群に陥りやすい。
■ 正解は「自分」と「社会」の間にある 自分の中に正解があると思い込む「青い鳥症候群」と、社会の中に正解があると思い込む「風見鶏症候群」。Z世代の部下が「青い鳥症候群」または「風見鶏症候群」に陥っているのであれば、まずは「そこに正解はない」ということを認識させなければいけない。 どちらの症候群も、一度陥るとなかなか抜け出せない。もし、青い鳥症候群や風見鶏症候群に陥っているのであれば、そこからの脱却を支援する必要がある。 青い鳥症候群から脱却するポイントとしては、まずは今の自分で肯定できる部分を見つけてもらうことである。簡単に今の自分を否定するのではなく、これまで培ってきた経験やできるようになってきたことを承認し、そこを軸に自分を取り巻く環境との間でどのような価値が発揮できるのか。そして、その価値の発揮から自分はどのような喜びを得られるのかを考えてもらうことが大切だ。 結果として、現実に立脚した「漠然とした願望」を見つけることもできるであろう。最初は、なかなか自分を認めることができないかもしれない。だからこそマネジャーから、そのメンバーが持っている特性を承認し、活かし方を考えてあげることが大切である。 風見鶏症候群から脱却するポイントとしては、まずは自分自身の五感で感じる世界を肯定することだ。誰がどのように言おうとも、自分にとっての真善美や快不快があるはずである。その自分自身の感覚を軸に、取り巻く環境を切り分ける作業が大切である。仕事をするうえで喜びと感じる部分は何なのか。人と関わるうえでどのようなことができたら自分の喜びと感じることができるのかを考えてもらうことが大切だ。 結果として自分の感性に立脚した「漠然とした願望」を見つけることもできるであろう。マネジャーはメンバーへの問いを通して、気付きを促してあげてもらいたい。 いずれにせよ、「漠然とした願望」の正解というのは、自分の中にも社会の中にもない。正解は、自分と社会の間に存在しているのだ。自分の感情と社会の状況を同時に意識しながら行動していく中で、個人人格を自覚できるようになっていくのである。そして、その「漠然とした願望」を軸に自分なりのキャリアをつくっていくことができる。
小栗 隆志