秋の古都は「徒歩並み」のノロノロ渋滞 京都市はマイカーの観光駐車場利用を禁止、効果は
これまで市は観光地へのマイカー流入抑制のため、郊外に車を止め、公共交通機関に乗り換えて来訪してもらう「パークアンドライド」を呼びかけてきた。今月からは近隣の駐車場つき商業施設と連携し、パークアンドライドの利用者は駐車料金を無料にするなどの対策を始めた。
清水坂観光駐車場近くで土産物店を営む大井秀民さん(72)は「駐車できないことを知らずに来る人は多い」とこぼす。恐れているのは火災などの緊急事態だ。これまでにも周辺では渋滞の影響で緊急車両の到着が遅れたことがあるといい、混雑解消は喫緊の課題といえる。(堀口明里、渡辺大樹)
■観光スタイルの転換議論を
阿部大輔・龍谷大教授(都市計画)の話
美術館や博物館などの観光施設を事前予約制とし、観光客の流れを整理することは世界的な潮流だ。駐車場を観光バスだけの事前予約制にした今回の取り組みは、混雑回避の点において一定の妥当性があるといえるだろう。
ただ清水寺周辺は昔から道が狭く、自動車交通に有利ではない構造だ。京都市は観光客に対し、大型バスで近傍まで行く従来の観光スタイルからの転換を促し、徒歩や公共交通機関を利用してもらうための議論を深めなければならない。
京都市は人口160万人に対し、年間5千万人以上の観光客を受け入れている。駐車場や宿泊施設の供給能力に見合うように、観光需要を調整することも論点になるだろう。観光は繰り返し訪れてもらうことで成り立つ。混雑で街のイメージが悪化し、再訪につながらなければ本末転倒だ。
一方、観光地を抱える地元にとっては、観光客が増えて生活が向上したことを実感できないと、多数の来訪を受け入れることは難しい。市内で問題となっているバス運転手の確保や京町家の再生など、市への再投資の動きが活性化すれば、市民も納得感を得られるのではないか。(聞き手 入沢亮輔)