なぜアダストリアはヨーカドーとタッグを組んだ?“アパレル協業”が与える双方にとっての“勝算”
イトーヨーカドーが、2月にアダストリアと協業する新ブランド『FOUND GOOD』を展開する発表は巷で賛否を呼んだ。昨今、GMS(総合スーパー)のアパレルといえば、メーカーのテナントのイメージが強かったが、GMSとSPAがタッグを組むパターンは極めて珍しい。そもそもアパレル事業を撤退していたイトーヨーカドーがなぜ今回の取り組みに踏み切ったのか。また、アダストリアから見た、イトーヨーカドーの課題とは? 双方に話を聞いた。 【画像】実際の店舗はどんな感じ? 平場の“雰囲気”にもこだわり抜いた『FOUND GOOD』店舗の様子
■「食品は買いに行くけど雑貨洋服は買わない」イトーヨーカドーに突き付けられた問題点
イトーヨーカドーは昨年、自社アパレル事業から撤退。「食」にフォーカスしていく方針転換を掲げたことは記憶に新しい。しかし、今年になり、アダストリアと協業する新ブランド『FOUND GOOD(ファウンドグッド)』を木場店・大和鶴間店・松戸店・東大和店などでスタートした。 「自社開発のアパレルをやめることで、テナント化を進めていたものの、利益の課題解決に結びつかないというのが正直なところでした。利益性とお客様のニーズにワンストップで応えるるためには外部の協業がよいのではないということに考えが至りました」 ブランドロゴデザイン、及びパッケージングなどのクリエイティブディレクションはUNITED ARROWSなどのパッケージデザイン、坂本龍一やサカナクションのCDジャケットデザインなどに携わる平林奈緒美氏。アダストリアが関わっていることからGMSアパレルとしては一段抜けた、革新的新事業といえる。この経緯について株式会社イトーヨーカ堂・執行役員・専門店事業部長の梅津尚宏氏は「30~40代のお客様獲得が狙いの一つ」と話す。 「30代40代のファミリー層の方々は最も多忙な世代で時間もなく子育てで経済面が大変ななか、『失敗しない買い物をしたい』とおっしゃっていることが調査でわかりました。弊社のメイン層が50代以上のお客様なのですが、長期的に見れば若い層のお客様にも来ていただきたい。そこでワンストップで失敗しない価格と品質を満たそうと、『グローバルワーク』や『ローリーズファーム』など、30~40代の顧客層に強いアダストリア様とタッグを組んだのが始まりです」(同氏) 逆にアダストリアにとってもイトーヨーカドーと協業することで、シニア層も狙える。また、テナントではなく協業ブランドを作っていくということに大きな可能性を感じたようだ。 「アンケートを取った結果、イトーヨーカドーさんには『食品は買いに行くけど雑貨洋服は買わない』という意見がありました。そこに弊社としてもチャンスを見出しました。あまりにもトレンド感のあるものはやはり都心の駅ビルやブランドで買われるだろうと。そこで、我々が得意とするテイストを取り入れつつ、少しだけ背伸びしたファッションを考えたうえで、シンプルにコーディネートできる時短コーデもでき、さまざまな体型の方に着ていただけるような伸びる素材など機能面で生活のストレスをなくすもの、他の競合ブランドさんとの製品とも合わせてコーデできるものを提案させていただきました」(アダストリア執行役員ビジネスプロデュース本部長 小林千晃氏)