<一歩一歩・龍谷大平安センバツへの軌跡>/中 初戦快勝で開けた視界 チーム結束、近畿大会出場 /京都
県営紀三井寺球場(和歌山市)のスコアボードに「13」の数字が刻まれた。 2022年10月22日の秋季近畿地区大会1回戦。海南(和歌山)と対戦した龍谷大平安、四回裏の攻撃だった。コンディションに問題のあった相手のミスにも助けられて三回まで小刻みに計4点を奪い、初戦の緊張感から解放された打線が猛威を振るった。 1死後、9番・桑江駿成(2年)の内野安打が突破口となり、1番・白石力翔(2年)が右前打で続く。その後も単打が飛び、6番・八鳥煌紀(2年)の適時二塁打まで7者連続安打。死球をはさみ、回の先頭打者として凡退した広田和希(2年)の中越え適時二塁打から3連続長短打。さらに四球、平中清太郎(2年)の適時三塁打と続いて13者連続で出塁した。 打順に関係なく、どの選手も「つなぐ」意識を徹底し、大振りせずに打てる球が来れば的確にはじき返した。めったに選手をほめない原田英彦監督も「どんな相手でも、あれだけ安打を続けるのはなかなかできない。チームが一つになってきた」と驚きの表情を見せた。 結果は17―0で、完璧と言ってもいい内容の五回コールド勝ち。かすんで見えなくなりそうだった甲子園に向けて、次第に視界が開けてきた。 ◇ 反転攻勢は京都国際に大敗した翌日の10月2日、府大会の3位決定戦から始まった。主将の山口翔梧(2年)は「前日は落ち込んだが、反省するより鍛えてきた打力を信じて戦おうと話し合った」という。相手の鳥羽も前日にコールド負けを喫しており、「気持ち的にはイーブン」という意識があった。 前日102球を投げた桑江が「自分が絶対抑える」と、この日も先発。三回に「失投だった」という一球を3ランされて手痛い先制点を許したが、打線が奮起。単打と四死球でしぶとくつないで五回に3点、六回に2点を奪って逆転した。 七回途中から救援した伊礼徳風(2年)が九回2死から同点本塁打を浴び、その後もピンチが続いたが、勝ち越し点は許さず、延長十回に敵失にもつけ込み、平中の適時打でサヨナラ勝ち。やっとの思いで3位に入り、近畿大会の出場権を手にした。 新チーム結成までほとんど公式戦の経験がなかったメンバーが、苦しい戦いを経て少しずつ成長の軌道に乗り始めていた。近畿大会でのさらに厳しい戦いに向け、主力選手の多くが入る寮では、午後10時で自主的に携帯電話を回収して朝まで見ないようにした。「勝つために何をすべきか」という自覚が、一人一人に芽生え始めていた。【矢倉健次】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2022年秋季府大会3位決定戦 鳥羽 0030001010=5 龍谷大平安 0000320001=6 (延長十回) ▽2022年秋季近畿地区大会1回戦 海南 000 00=0 龍谷大平安 12113×=17 (五回コールド) 〔京都版〕