NewJeansハニの涙は露と消えた 労働庁「職場内いじめを禁じた労働基準法はアイドルに適用されない」
メンバーによる専属契約解除へも影響か?
10月15日に韓国国会の環境労働委員会の国政監査にNewJeansのハニが参考人として出席し、いじめについて詳細を涙で訴え「会社が私たちを嫌っていると確信した」と涙を浮かべて訴えてから1カ月。ハニの悔しさは解消することはなかった。 【動画】NewJeansハニが国会で涙のメッセージ ソウル地方雇用労働庁ソウル西部支庁は20日、ハニが職場内いじめにあったという疑惑に関連して「ニュージーンズファンが提起した『職場内いじめ』嘆願に対して労働基準法上の労働者と見ることが難しく行政終結した」と明らかにした。韓国メディア聯合ニュース、ニューシス、スターニュースなどが報じた。 <いじめ問題をファンが労働庁に対し訴えていた> 今回の発表は、アイドルは労働基準法上、労働者でないのでいじめ行為があったとしても「職場内いじめ」には該当せず、これ以上調査を進めることは難しいという趣旨だ。 NewJeansのハニは10月11日、他のメンバーたちと共に行ったYouTubeでの緊急生配信で「HYBEの建物の廊下で一人で待っていたときに、他のアーティストとマネージャーさんが通り過ぎて挨拶したが、私の前で「無視して」とおっしゃった。なぜそんな目に遭わなければならないのか理解できず、呆れた」と暴露した。続いてハニは「新しく来たADORの代表に申し上げたが『証拠がなく、遅すぎた』と言ってそのままにしようとした。私たちを守ってくれる人がいなくなったことを感じた。私たちを思う気持ちが全くないということを感じた。私は率直に申し上げたが、一瞬にして嘘つきになったようだった」と訴えた。 ここでハニが指摘したのはNewJeansの生みの親として知られる所属事務所の前代表ミン・ヒジンが、「NewJeansをコピーした」としてHYBEを批判した、新人ガールズグループ「ILLIT」のマネージャーだったと指摘されている。 ハニのこういう発言についてNewJeansの一部ファンは「HYBE内のNewJeansいじめ疑惑は実体的真実が糾明されなければならない必要性がある」とし、「労働基準法の『専属捜査権』をもつ雇用労働庁に捜査を依頼した」として嘆願を出していた。 韓国の労働基準法76条2項は「職場での地位または関係などの優位を利用して業務上適正範囲を越えて他の労働者に身体的・精神的苦痛を与えたり勤務環境を悪化させる行為」を職場内いじめと見てこれを禁止している。 <アイドルは労働者ではない> ハニに対する職場内いじめ疑惑を調査したソウル地方雇用労働庁ソウル西部支庁はこの嘆願に対して「ファム・ハニ(ハニの本名)がマネジメント契約の内容と性質上、主従関係で賃金を目的に労働を提供する労働基準法上の労働者に該当するとは見難い」とし、「互いに対等な契約当事者の立場で各自の契約上の義務を履行する関係に過ぎず、会社側の指揮・監督があったとは見難い」と明らかにした。 またソウル支庁は「一般社員に適用される会社就業規則などの制度やシステムが適用されていない点、一定の勤務時間や勤務場所が決まっておらず出退勤時間を決めることができない点、芸能活動に必要な費用などを会社とファム・ハニで負担している点」等も労働基準法上の労働者と見ることはできないと説明した。 さらに「支給された報酬が収益配分の性格で、労働自体の対価とは見難い点」「税金を各自負担し、労働所得税ではなく事業所得税を納付する点」、「芸能活動を通じた利潤創出や損失のリスクなどを自ら引き受けていると見られる点」も指摘した。 ソウル支庁側は最後に、最高裁が2019年9月、芸能人専属契約の性質を民法上の委任契約または委任と似た無名契約に該当すると判示した判決に言及し、「労働基準法上の労働者に該当するとは見難い」と再度明らかにした。 これまで韓国では一般的に歌手や俳優のようなフリーランスのアーティストたちは、特殊形態労働従事者として分類されてきた。 裁判所でも労組法上、俳優を労働者と認定した判例はあるが、労働基準法上の労働者であるかどうかに対しては判断を下した例はなかった。また政府も2010年に芸能人を労働者よりは企画会社と専属契約を結んで活動する「例外対象者」という判断を出していた。 <これで終結ではない> ただハニに対する雇用労働庁の判断が出たが、これで終わったわけではない。ハニが国会の環境労働委員会国政監査で参考人として出席し証言した後、与野党がアーティストの「労働者性」が法的に保障されないということについて、労働法の死角地帯に対する制度補完を一斉に要求したのだ。 雇用労働庁関係者は「労働者ではないのに労働基準法では規制できない。またすべての契約関係を労働基準法で包括することもできない」とし「芸能関係者の場合、それと関連した法令など個別法があるので、そちらで保護する方法を考えなければならない」と話した。 一方、雇用労働庁は毎年良質な働き口創出と労働環境改善の先頭に立った企業100カ所を最高企業として選定するが、HYBEは9月に労働部が選定した「今年の働き口最高企業100カ所」に選定されている。だが、ハニのいじめ被害問題が提起され、NewJeansファンを中心に選定取り消し要求が出てきたため、雇用労働庁は国政監査で「関連陳情(苦情)の調査結果が出てくれば、これを土台に細心に(撤回可否を)調べる」と回答した経緯がある。 雇用労働庁関係者は「(最高の企業選定を撤回するには)法令違反があるか事実関係を先に確認しなければならないが、現在その手続きを踏んでいる」とし、「HYBEの場合、結論が出た職場内いじめ件の他にも労災隠蔽に対して調査している」と説明した。 ただ「調査後、法違反が確認されたとしても最高企業指定は行政処分であり、これを取り消すには聴聞手続きおよび審議委など色々な過程を経なければならない」として「撤回理由が不確定的で包括的なので正当なのか委員会で検証を受けなければならないだろう」と話した。 最高企業選定条件によれば、公的が偽りだったり推薦制限対象であることが判明した場合、社会的物議をかもしたり報道・訴訟・嘆願提起などで問題が発生した場合、労働基準法・産業安全保健法に違反した場合などには選定を撤回することができるという。 NewJeansメンバーは今月13日に、所属事務所のADORに「専属契約の重大な違反事項を全て是正せよ」と内容証明で要求したが、ここで挙げられた「重大な違反事項の是正」の一つに今回のハニへのいじめ問題も含まれている。それだけにNewJeansメンバーが仮に専属契約の無効を求めて訴訟を起こした場合、このハニに対するいじめ問題も訴訟へ大きな影響を及ぼすと見られ、今回の雇用労働庁の判断は重要な意味をもつと思われる。