2年目の夏、「見る阿呆」卒業しました 阿波おどり愛つのらせた新人記者
初舞台。案外きちんと踊れたと思い、知人が撮ってくれた写真を見ると、必死な形相の自分が…。振り付けは大きなミスなく決めることができた。 13日夕方は屋外演舞場のトップバッターだった。左右に作られた桟敷席の真ん中の道を通り抜けながら踊る。満員の客席を見て、高揚感で自然と笑顔になった。午後6時とはいえ、アスファルトの上は灼熱。汗だくで踊りきった。午後9時半、最後の出番を踊る頃には足が棒のようで、腰を低く落とそうにも踏ん張れず、フラフラしてしまった。脚の筋肉や持久力には自信があったのに…。もっと練習しようと誓った。 ▽愛する「踊り天国」 演舞場の外では、観客らが輪になって踊り手を囲む「輪踊り」の光景が見られる。観客も輪の中に招かれ「踊る阿呆」になる。うまい・下手、年齢、性別、国籍は関係ない。市街地の至る所で自然発生的に踊りが始まる。期間中の徳島は「踊り天国」と称されるが、これこそがその所以であり、私が阿波おどりを愛する理由だ。
▽台風が…物議を醸した3日目 14日。関西に台風7号が接近していた。退勤後、集合場所に着くと、大雨の中、演舞場を踊り終えた連員たちのずぶぬれの姿があった。高齢者等避難や暴風警報が発令され、大雨の演舞場は、前日までの満席とは一変、数十人ほどしかいなかったが、残ってくれたからこそ私も続いて踊った。「頑張れー」という声援や拍手がうれしかった。 「警報が出てもやるのはどうかなと思った。でもこの日のために来てくれたお客さんのためを思うと、複雑な気持ち」と田中さん。祭りを強行した徳島市などで構成される実行委員会の対応は、問題視されている。 ▽唐突な夏の終わり 最終日の15日。踊りが始まる予定だった午後6時前には雨はやんでいたが、既に台風の影響で中止が決まっていた。突然の「夏の終わり」。やるせない気持ちになった。 県が臨時で県庁前などに設けた踊り広場や公園では、このまま終われない踊る阿呆たちが繰り出し、見る阿呆の輪もできていた。台風が去り、秋の虫が鳴き始める中、名残惜しそうな「ぞめき」だけが徳島の街のあちこちから響いていた。
コロナ禍や台風でも消えない伝統。4日間に懸ける徳島県人の気概に触れ、私もまた来年の4日間に向け頑張ろうと思った。阿呆たちの一人として、来年の夏を指折り数えている。