リモートでガヤはできない、でもやるしかない――コロナ禍でピンチ? FUJIWARA・藤本敏史の「新しいガヤ様式」
再びガヤれる日が来ることを信じて
ほかの芸人のギャグを堂々とパクることでも有名な藤本。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)では「パクリたい-1グランプリ」という企画にも呼ばれている。ここで彼が喜々として演じるのは、島田夫妻の「カンツォーネ」やゴー☆ジャスの「君のハートにレボリューション」など、ちょっとマイナー路線のものが多い。 「これ絶対やらされてるやろ、みたいなのが好きなんですよね。『エンタの神様』に出ていた生徒会長金子とか、KICK☆とか。僕は『エンタ』を見るときも、普通のちゃんとしたコントは飛ばして見てますから。最近の『エンタ』もいいんですけど、そういう芸人が出てきてないのがちょっと寂しいです」 藤本のマイナー志向は筋金入りだ。映画を見ていても主人公ではなく、それをサポートするサブキャラのほうに感情移入してしまう。テレビの中でもガヤ芸人はメインにはなれない。映画の中の脇役をそんな自分と重ねて見てしまう。 「若手のころはメインになりたいと思ってましたけど、無理だって気づいたんですよね。ガヤ芸人っていう今のポジションも楽しいから、俺はそういうスタンスでいくしかないのかな、って」 藤本は「Mr.ガヤ芸人」としての地位を確立。芸人が大勢出るようなバラエティー番組では欠かせないキーパーソンとなった。そんな彼がテレビに出続けられてきた理由も「ガヤ」にある。 「僕、カメラ回ってないところでもずっとガヤ飛ばしてるんですよ。収録の雰囲気が悪くならないように、勝手に使命感に駆られているんです。縁の下の力持ちって言ったらかっこつけすぎかもしれないけど、もしかしたらスタッフさんがそういうところを見てくれているんじゃないのかな、と思います」
劇場の楽屋では年の離れた見知らぬ後輩芸人にも気さくに声をかける。回り回ってそんな後輩芸人とテレビで共演したりすることもあり、そのときには話していた経験が役に立つ。 思っていることを声に出し、話しかけることで人とつながる。ガヤは収録時間の隙間を埋めるものであり、人と人の間をつなぐものでもある。ソーシャルディスタンスが求められ、人と人が物理的につながれなくなっている時代に、藤本のような芸人が苦戦を強いられるのも無理はない。 「『リモート収録でガヤ芸人は淘汰される』っていうネットの記事を見て、吐きそうになりましたよ。コロナが早く収まってほしいっていうのは、芸人の中で僕が一番切実に思ってるんちゃうかな」 新型コロナウイルスはガヤ芸人を殺すのか? 最も切実にコロナ収束を願う芸人がここにいる。ガヤで笑える世界を取り戻すにはもう少し時間がかかりそうだ。