黄銅棒問屋、銅建値上昇で調達に苦悩。仕入れ値高で在庫圧縮の動き
電気銅建値の急騰を受けて、黄銅棒問屋は調達方針に頭を悩ませている。仕入れ値がコロナ前の約2倍に上昇しているため、資金面で購入量に制限がかかっている。扱い筋はサイズラインアップの縮小や、在庫するメーカーを圧縮するなどの対応を迫られている。 黄銅棒価格の指標となる電気銅建値は16日、過去最高値のトン152万円に到達した。黄銅削粉購入価格もキロ1070円どころで推移している。 このような環境下、コロナ前の19年末にキロ640円程度だった黄銅丸棒の店売り価格は、足元では1230円へと約2倍に上昇。調達にかかるコスト負担も重くなっていたため、これまでの過程で黄銅棒問屋もメーカーへの発注量を抑えながら不足分は仲間商いで調達するといった、小口当用商いで安定供給を維持してきた。 しかしながら年初にトン125万円だった銅建値が4カ月弱の間に2割以上上伸する中で、扱い筋も従来通りの在庫を維持できなくなりつつある。東京の扱い筋からは「これまで直径1ミリ刻みのサイズで在庫していたが、サイズラインアップを減らすことで在庫を維持している」という声も聞こえる。このほか複数の大手メーカーの材料を扱っている流通は「同じサイズならある程度メーカーを絞ることで在庫を圧縮するケースもある」(別の流通筋)という対応もあるようだ。 黄銅棒の店売り市場は新設住宅着工戸数の低迷を受けて、主力の建築向けが振るわない。ガス機器や水栓金具では補助金絡みの需要が見込まれているものの、「あくまで一時的な動きであり、市場全体をけん引する力はない」(流通筋)という。また車載部品向けも一部自動車メーカーの不正問題が尾を引く可能性が指摘されている。 需要が振るわない一方で、電気銅建値の先行きは不透明感が強い。足元の急騰はLME価格の上昇よりも、急激な円安が作用したもの。「足元のLMEの数値で、為替が1ドル=120円ならば銅建値はトン110万円近辺。為替のさらなる円安、LME1万ドル超や亜鉛が連れ高となる可能性を考えれば、一段高の可能性もぬぐい切れない」(同)という。先高の可能性がある一方、米国の金融政策の行方や日本の為替介入など可能性を考えれば、銅建値の急落リスクも払しょくできない。「リーマンショックの時のような急落がないとは言えない。在庫評価損が膨らむ事態は避けたいため、調達も増やせない」(別の黄銅棒問屋)ため、身動きが取りにくい格好だ。