「めちゃくちゃ心配」された知的障害の女性が出産、「めっちゃいいお母さん」に 子育てを可能にした秘訣とは
早川さんは、忘れっぽい葵さんのために幼い頃からメモを書く癖を付けさせた。学校卒業後、障害者枠でスーパーに就職した葵さんは「仕事ノート」を自分で作り、指示されたことを書いて覚えている。 週5日勤務で、朝は夫が出勤前に陽耀君を保育園に預け、夕方に葵さんが迎えに行く。料理を含めて家事は夫と分担。家計は夫婦共働きの収入と、葵さんの障害年金でやりくりする。家計簿もつけている。 ▽「支援受ければ何とかなる」 葵さんの育児を可能にしているのは、こうした「メモ」の工夫以外にもう一つある。母、早川さんの「先回り」の対策だ。 葵さんが自分で料理ができるよう、写真を使って電子レンジの使い方や調理方法を教えた。また、葵さんが小さい頃から障害特性や成育歴、支援機関の担当者などの情報をまとめたファイルを作成。病院受診や福祉サービスの利用時などに担当者へ示して配慮を求めた。 妊娠が分かってからは、このファイルを持参して市役所の子育て支援、保健、障害福祉の各部署を回り、連携して支援してくれるよう依頼した。
出産後、育児に慣れるまでの1カ月間は障害福祉のヘルパーだけでなく、市の育児支援ヘルパーも利用して乗り切った。 陽耀君の入園が決まると、早川さんが保育園に出向いて葵さんの障害を説明。「必要な物をメモで具体的に書いてもらえると助かります」などとお願いした。 早川さん自身が保育士で、これまで得た知識や経験も生きた。「私がいなくても葵が生きていけるよう、常に先回りして策を立ててきた」と話す。 知的障害者の親の多くは「もし子どもが生まれたら、私たちやきょうだいが面倒を見なくてはいけなくなる」と考えがちだ。だが、葵さん自身がいろいろなことをできるようになったことに加え、支援サービスの利用により、早川さんが葵さんに会うのは週1回程度。心配だった日々を乗り越え、今は「福祉の支援を使えば、何とかなる」と明言する。葵さんは「子育ては楽しい。幸せです」と笑顔で話す。 ▽沐浴、授乳、保育園への連絡…ヘルパーは育児支援も可能