京都「この日本語が読める方はご入店ください」飲食店の貼り紙が物議… 使用言語による“差別”は法的に許容される?
言語で客を選別するのは人種差別にあたる?
話題となった貼り紙の店も、原田さんと似たような悩みを抱えていたのかもしれない。日本語話者もしくは日本人のみの入店を許可する行為について、法的には差別に当たらないのか。 杉山弁護士は、「特定の言語話者しか受け入れないのは、差別的行為になるかもしれませんが、必ずしも違法とは限りません」と答える。 「そもそも日本の法律では、『差別だから悪い、違法だ』といった判定をしません。物事を区別する行為があった場合、その目的や効果において不当かどうかの評価を経たのち、問題や違法性があるかを判断します。つまり、差別かどうかを論じることに意味はなく、大事なのは“その行為が正当か、不当であるか”です」(杉山弁護士、以下同) 杉山弁護士によれば、「英語や中国語での対応を法律で義務付けられていない以上、日本語でのサービス提供しか対応していないのであれば、“日本語を理解できないと受け入れられない”というのは、不当な扱いにはならないと考えられる」という。 「もちろん、話題の貼り紙は外国人排除のための方便かもしれないですし、言語を理由に社会全体で外国人を締め出すような動きは許容されるものではありません。しかし現時点では、個別の店舗に外国語での対応義務を課すことも過剰であり、現実的ではない。さらに、どのような営業をどのような相手と行うかという“経済活動の自由”も、人権のひとつです。人権間の衝突は、一方を引っ込めさせる場合、それ相応の正当性と必要性がないと通りません」 ただし、国籍や人種を理由とした利用禁止は、明確に差別とされ、実際に違法とされた判例もある。 これは、憲法14条から人種に基づく差別の禁止が導かれていることに加え、日本が「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(通称「人種差別撤廃条約」)に批准しているためだ。国籍や人種を理由にした入店拒否は、「故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した」として、不法行為による損害賠償(民法709条)が認められるので、飲食店を経営する人は注意が必要と言えるだろう。