熊本西、最後まで果敢に 「45人の全員野球」誇りを /熊本
<センバツ甲子園> 第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に21世紀枠で初出場した熊本西(熊本)は28日、前回大会準優勝の智弁和歌山(和歌山)と対戦し、2-13で敗れた。初戦突破はかなわなかったが、序盤に先制点を挙げ、中盤以降も積極的な打撃で強豪校に臆せず立ち向かった。ひたむきに白球を追った選手たちに、スタンドは歓声で応えた。【清水晃平、宗岡敬介】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 在校生や卒業生約1800人が大型バス26台に分乗して駆けつけたアルプススタンドは、紺とオレンジ、2色の帽子とジャンパーで、校名の「西」を表す「N」の人文字を作って選手を鼓舞した。夏の甲子園に初出場した1985年にも甲子園で応援したOG、村島美樹さん(51)はこの日のために住んでいる英国から帰国。「34年ぶりに母校を応援できてうれしい。頑張ってほしい」 先制したのは熊本西。二回、先頭打者の主砲、堺祐太選手(3年)が内角低めのスライダーに「体が反応した」と左前打で出塁。霜上幸太郎主将(3年)も右前にはじき返し、好機を広げると、併殺の間に堺選手が生還してセンバツ初得点。「よっしゃー」。歓喜に沸く応援席で堺選手の母美香さん(46)は「よく打ってくれた。この調子で頑張って」。 好調な立ち上がりを見せた霜上投手だったが、2巡目に入った三回、4連打を浴びて4失点。前主将の西村大智さん(18)は逆転を信じて声を枯らした。「冬の練習でやってきたことを信じてプレーすれば、まだひっくり返せる」 相手の勢いは止まらず、四回には3点本塁打などで失点したものの、チームはひるまない。四回から七回まで毎回、先頭打者が出塁。五回に1点返したが、その後はあと1本が出ずもどかしい展開が続いた。 七回で1度は降板した大黒柱、霜上投手が九回2死から再登板。「すごい打者と何度も対戦できるのは楽しい」。最後は自信を持つチェンジアップで左飛に打ち取り、159球の熱投を終えた。父幸弘さん(51)は「よく投げた。この経験を夏につなげてほしい」とねぎらった。 アルプス席では、昨年11月に練習試合中の事故で亡くなった部員の遺影を在校生が手に抱いて、最後まで部員45人の全員野球を貫いた選手に声援を送った。試合後、横手文彦監督は目を腫らして初めての甲子園を振り返った。「悲しみを越えて今日の舞台にたどり着いた過程に誇りを持ちたい」 ◇吹奏楽演奏、OB助っ人に ○…熊本西の一塁側アルプススタンドには、吹奏楽部のOBら約40人が駆けつけた。吹奏楽部は今春の卒業生を含めても部員は約20人の小所帯。学校の求めに助っ人を買って出た。甲子園初出場だった1985年夏当時、高校2年生でアルプス席で演奏した保育士、三原留美さん(50)は仕事を休み、3人の娘と参戦。三原さんは「当時は吹奏楽部ではなく愛好会で、その時も先輩たちに支えられて甲子園で演奏できた。今日は恩返しの気持ちです」と34年ぶりの甲子園で懸命の応援だった。 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦 智弁和歌山 004702000=13 010010000=2 熊本西