どこへ行ってもクラゲばかり…大量発生で漁業被害 「クラゲカッター」で駆除も 広島県東部、一斉駆除に同行
広島県東部海域でミズクラゲが大量発生し、漁業被害が出ている問題で、福山市は本年度、「クラゲカッター」と呼ばれる装置を漁船に設置して駆除に取り組んでいる。今月初め、市と県による一斉駆除に同行し、備後の里海の今をみた。 【動画】「クラゲカッター」で大量発生のミズクラゲ駆除(福山市内海町) 田島(同市内海町)の南約2キロの沖合。集まった16隻の底引き網船が海中に網を下ろし、ゆっくりと進み始めた。「300キロ集まった」。30分ほどで知らせが入る。走島漁協の村上武実さん(81)が網を船に引き上げていた。「もういっぱいよ。網から雨のようにこぼれとる」 クラゲカッターは、四角柱の中に厚さ1ミリの刃を5センチ前後の間隔で格子状に並べた装置。市は4月、市内6漁協の漁船計23隻に取り付けた。村上さんが船体脇の装置にクラゲを投入すると、細かく切断され、ボトボトと海面に落ちた。 専門家として駆除に同行した広島大の上真一名誉教授(74)=海洋生態学=は「クラゲを早急に減らすそれなりの効果はある」としつつ、根本的解決には「ポリプ(幼体)への対応が必要」の認識を示した。 走島漁協の橋本清作さん(54)の船では、海面に上がった網が白く膨らんでいた。クラゲ1匹は直径20センチほどだが、無数に寄せ集められ、まるで1メートルを超える巨大なボールのように見える。 船に載せようと、網を巻き上げる機械がカタカタと音を立てる。だが重過ぎて動かない。「パチン」―。つり上げるロープが切れた。 橋本さんは漁具でクラゲの数を減らし、自力で網を引き上げた。本来は魚のために使う容器に入れると、バケツ約30杯分がすぐ満杯になった。手網ですくい、カッターに入れる。地道な作業を何度も繰り返す。 「どこに行ってもクラゲばかり。漁師は駄目になる一方よ」。橋本さんはため息をついた。網の中で他に目に留まったのは、タイ2匹とポリ袋だけだった。
中国新聞社