慶大・清原正吾「『見たか!』『ここまで育ててきてくれてありがとう』」スタンド父へ「一生の思い出」早慶戦1号
◆東京六大学野球秋季リーグ戦最終週第1日 ▽慶大9―1早大(9日・神宮) 慶大・清原正吾一塁手(4年)が“最後の早慶戦”の初戦で3号ソロを含む4打数4安打と大暴れした。2万6000人が見届ける中、「4番・一塁」で出場すると、2点リードの6回1死、来秋ドラフト候補で早大の絶対エース右腕・伊藤樹(3年)から左越えに早慶戦初アーチ。ネット裏の父・和博さん(57)へ感謝の一発をささげた。野球継続か一般就職か、注目の進路は早慶戦後にも決断の見通しだ。 打球が左翼席中段へと着弾した瞬間、神宮の秋空に悲鳴と歓声が交錯した。清原は軽快な足取りでダイヤモンドを一周すると、ネット裏で見守る偉大な父を指さし、叫んだ。6回1死。初球だ。今季ここまで6勝無敗の早大エース・伊藤樹の内角直球を強振。豪快な一撃に、大観衆が酔った。 「完璧な当たりでした。早慶戦は特別な舞台。たくさんのお客さんの前でダイヤモンドを一周するのは、一生の思い出になる」。父へのメッセージに「『見たか!』もあれば『ここまで育ててきてくれてありがとう』という気持ちも込めて」と明かした。“お祭り男”と呼ばれた和博さんを思わせる、大一番での一発。勝負強さの要因に「父親のDNAです」と笑わせた。 下馬評は早大優位。そんな空気を清原のバットが振り払った。初回2死、4回1死でも右前安打と、課題の逆方向にヒットを重ねた。8回無死一塁も右前安打でチャンス拡大。11安打9点で打ち勝つ原動力になった。「逆方向に3本は自信になる。僕にとって価値ある3本」と胸を張った。 愛する家族に「最後の雄姿を目に焼き付けてもらいたい」との思いを胸に戦場に向かった。今季3本目。1号のホームランボールは父へ、2号は母・亜希さん(55)に贈った。3号の届け先には「弟です」と慶応で昨夏の甲子園Vメンバー・勝児内野手(3年)を挙げた。勝児も兄の背中を追い、慶大野球部に入れ違いで入部する。「僕のホームランボールが原動力になり、大学生活を頑張ってもらいたい」と威厳を示した。 10月24日のドラフト会議では指名なし。「自分の中でポジティブに切り替えられた」。さらに強度を上げ、鍛錬に没頭した。無限の潜在能力にあふれる逸材にはオイシックス、くふうハヤテ、独立L7球団と計9球団からオファーが届く。一般就職も有力な選択肢。野球人としての将来性を評価する堀井哲也監督(62)は「この一発で、さらに野球がやりたいと思ってくれたらね」と笑顔で期待した。 10日は勝ち点を懸けての2回戦。「全てを出し切って、勝って、みんなで笑って終わりたい」と正吾。若き血を燃やして、難敵に立ち向かう。(加藤 弘士) ◆清原 正吾(きよはら・しょうご)2002年8月23日、東京都生まれ。22歳。慶応幼稚舎(小学校)3年から「オール麻布」で野球を始め、慶応普通部(中学)でバレーボール部、慶応高でアメフト部。慶大で野球に再チャレンジ。2年秋にリーグ戦デビューし、通算30試合で110打数28安打の打率2割5分5厘、3本塁打、12打点。今春のリーグ戦で一塁手のベストナイン。186センチ、90キロ。右投右打。
報知新聞社