芥川賞イチオシ候補作は? 書店『双子のライオン堂』店主に聞く、純文学の楽しみ方
7月19日に発表される第169回芥川賞・直木賞。新進作家による純文学の中・短編作品のなかから、最も優秀な作品に贈られる芥川賞について、書店『双子のライオン堂』の店主・竹田信弥さんに、候補作の魅力や、純文学の楽しみ方を聞きました。 【画像】芥川賞候補作が決定 新人作家や作詞家が初ノミネート 東京・赤坂にお店を構える書店『双子のライオン堂』。本の形をした扉を開けると、様々な分野で活躍する作家・批評家が選んだ本を中心に、新刊・古本・読書グッズが販売されています。 実家が本だらけだったこともあり本好きだという店主の竹田さんは、高校2年の時にオンラインで古本屋をスタート。社会人3年目の時に勤めていた会社を辞め、現在のリアル店舗開業に至ったといいます。本屋発の文芸誌『しししし』発行人兼編集長を務め、著書には『めんどくさい本屋―100年先まで続ける道(ミライのパスポ)』などがあります。
■芥川賞候補作のポイント
竹田さんは芥川賞のような文学賞があることで「1回立ち止まって今の文学がどういう状態なんだろうっていうのも定期点検みたいな感じで、(賞が読書の)きっかけになっています」と話します。
『我が手の太陽』
――1冊ずつご紹介していただけますでしょうか? 【『我が手の太陽』(著・石田夏穂)】 溶接工の話で、溶接工の人が職人としてのプライドを持っているんですけど、あることをきっかけにスランプに陥ってしまうんです。その時に現実と虚構がちょっとずつ溶け合っていくような形になっていて、身体を資本にして生きてきた人が、身体の調子を壊すことによって精神のほうもおかしくなっていく。仕事の描写も丁寧に書かれていく作品です。
『ハンチバック』
【『ハンチバック』(著・市川沙央)】 先天性の疾患による側弯症の主人公があることをきっかけに“ある願望”をかなえようとするお話です。とにかくこの小説は読者を圧倒する内容と構成です。読者を安全圏にはとどめておいてくれない主人公の語りには圧倒されますが、それでもどんどん引き込まれるような文章の力も感じる作品です。