【シニア世代の資産運用】資産の取り崩しに工夫をし投資にも着目
最近の物価上昇はシニア世代の生活大きな影響を与えています。とくに年金が収入の大部分を占めている方にとっては、資産の管理が大変です。預貯金や株式などを保有している方にとっては、どのようにして現在保有している資産を長持ちさせるかが課題となります。
日本は預貯金の比率が高い
シニア世代の多くは、銀行や郵便局にある程度の預貯金の口座をもっています。しかし現在の金融環境では、極端な低金利で利息がほとんどつかない一方で、食料品など日常生活に使う商品は次々と値上げされ、日々の日用品購入に頭を悩ませているのが現実です。生活が苦しくなれば、エアコンやテレビなどの買い替えなども思うようにはできません。 確かに現在も仕事を続けている方は、政府の後押しもあり賃金の上昇の恩恵を受けることができます。65歳以上の方で、再雇用やパートの仕事を続けていれば、給与面での改善も期待できるはずです。しかし、70歳を超え完全にリタイアされている方にとっては、年金収入の増額は期待できないため、現在保有する金融資産を、どう長持ちさせるかが大きな課題となります。 総務省の2022年の「家計調査」によると、65歳以上で世帯主が無職のケースの金融資産保有額は約2360万円です。その内訳は約67%が預貯金、約16%が有価証券(株式や投信など)、同じく約16%が保険(死亡保険、医療保険など)となっています。とくに株式など投資に回る資金が少なく、預貯金など貯蓄に占める割合が高く、全体の3分の2となっています。 直近では預貯金比率が減る傾向が見られるようですが、配当の期待できる投資信託などの保有比率が高い欧米に比べると、日本は大きく異なります。金利はわずかですが、「元本保証」に魅力を感じ、預貯金に多くの資金が集まっていることがよくわかります。
資産の目減りをどう抑えるか
限られた金融資産を長持ちさせるためには、預貯金の取り崩しをいかに抑えるかが大切です。少なくとも平均寿命を超えて生きることを前提に、保有する資産を計画的に減らしていくことを考えたいものです。 自分の寿命を想定し、それまで1年間に取り崩し可能な金額を計算し、それに沿って金融資産を減らしていくことです。ここ最近の物価の高騰は頭の痛い問題ですが、それでもムダな失費を抑え、できるだけ基準を守って生活費を収めていくことが大切です。 加入している保険の見直しも必要です。若いころに加入し、そのまま放置している死亡保険があるかを点検しましょう。まだ子どもが小学生であれば、将来を考え死亡保険に加入するメリットは十分にあります。 しかし子どもが社会人として自立していれば、死亡保険に加入し続けるメリットは薄れてきます。最近では、葬儀の簡素化が進み、「葬式の費用を保険で賄ってほしい」という発想も不要になりつつあります。 さらに医療保険も見直します。多くの疾病が「高額療養保険制度」の対象となり、一定額以上かかった医療費は還付される仕組みがあります。通常の健康保険に加入していれば、ある程度はカバーできます。「がんになったら高い医療費の支払いに困る!」などの不安に駆られ、加入した医療保険のスリム化は十分に可能です。これまで加入してきた保険を、可能な限り整理しましょう。 低金利の続く預貯金は、すでに実質的には目減りしていると考えて行動することです。とくに最近は、物価上昇を前提とした社会になりつつあります。例えば、毎年2%程度のインフレが進行することが前提になりつつあり、わずか0.1%程度の預金金利では、実質資産の目減りが確実に起こっています。 株式などへの投資は損害が出る、との側面も否定はできませんが、元本保証の預貯金が目減りしているのです。政府も「貯蓄から投資へ」という掛け声のもと。2024年1月から新NISAを制度化し、金融資産の移転を奨励しています。とくに預貯金中心の金融資産を保有されている方は、資産の延命を考える観点からも、一部は投資に移行させることを検討してはいかがでしょうか。