J1町田のロングスロー問題に黒田監督が「沈黙」を決めた理由
この日の練習後に同じくメディアの取材に対応した、キャプテンで元日本代表のDF昌子源(31)は攻守両面で広島に圧倒され、0-2のスコア以上の完敗を喫するとともに、ヴィッセル神戸にも抜かれて3位に後退した町田の現状をこう語った。 「このタイミングで自信を失うチームは正直、ごまんとあると思う。それでもあきらめずに、めげずにやっていくのがこのチームの本当の強さだと思っている」 今シーズンに鹿島アントラーズから加入し、開幕前のチーム内投票でキャプテンに選出された昌子は、町田が初めて臨んでいるJ1での戦いをこう振り返る。 「いまでもいろいろと言われているチームですし、僕以外にも何かしら叩かれている選手たちもいるだろうけど、そのなかで僕たちがダメになって沈んでいくのはそれこそ簡単なこと。変な話ですけど、今シーズンが始まったくらいから風当たりが強かった。それはチームのみんなが感じているし、こうした状況に絶対に負けずに、絶対にやってやろう、という思いに変えながら僕たちは優勝争いのなかにいるので」 昌子はそのうえで、黒田監督の存在に関してこう言及している。 「このチームの特徴が、監督のミーティングじゃないですかね。チームの雰囲気を見ながら、次に向かっていこう、と思わせてくれる言葉がすごく上手なので」 一敗地にまみれた広島戦から、リバウンドメンタリティーも問われる川崎戦へ。指揮官は最初の全体ミーティングで何を語ったのか。黒田監督は「自分があまりバタバタせず、ぶれない方がいいと思っている」とこう続けた。 「負けて悔しい、という気持ちをしっかりとピッチ上で表現できるようにもっていく。いまはそれしかできない。チームのコンセプトや準備してきたものを、最後まで出せなかった結果には不甲斐なさを感じているはずだし、それをしっかりと自覚させながら準備していく。失敗を二度と繰り返さないと思いながら人間は成長していく。その意味でひとつの敗戦や失敗を咎めすぎて、次へのチャレンジを足踏みさせるとか、臆病にさせるのが一番よくない。だからこそぶれずに、堂々と戦ってほしい」 残り6試合となった今シーズンのJ1戦線は、直近の10戦で9勝1分けの広島が勝ち点62でトップに立ち、1ポイント差の61で5連勝中の神戸が、3ポイント差の59で町田が続いている。昌子はこんな言葉も残している。 「僕たちにとって、ひとつの負けが優勝争いを終わらせる可能性があるかもしれない。でもそれは考えずに、目の前の試合で勝つ喜びを求めていきたい」 ピッチ上で目の前の相手と対峙する戦いだけにすべての思いを集中させながら、初志貫徹を誓う町田がシーズンの正念場に臨もうとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)