今期No.1ドラマの呼び声も…『西園寺さんは家事をしない』が記憶に残る作品となったワケ。唯一無二の魅力とは? 考察&評価
何も邪魔者扱いしなかった『西園寺さんは家事をしない』
なにより西園寺さんと楠見くんの関係にはもう一人、ルカがいる。「パパが西園寺さん好きって言うとムーってする」ルカを少しでも二人が邪魔者扱いしている節があったら、きっと苦しくて見ていられなかっただろう。視聴者が最後まで安心して見守ることができたのは、誰もルカの気持ちを置き去りにしなかったからだ。 キャパオーバーになってもルカに負の感情を一切ぶつけることがない楠見くん然り、ルカに「パパのこと好きにならないで」と言われ、楠見くんへの恋心を消し去ろうとした西園寺さん然り。ずっと好きだった西園寺さんから偽家族について知らされたYouTuberのカズト横井(津田健次郎)もそうだ。西園寺さんの仮彼氏として楠見親子の存在も丸ごと受け入れ、別れた後も偽家族の一員として彼らの助けになろうとする。 本作はルカだけじゃなく、誰を邪魔者扱いするということが一切なかった。ルカのことを引き取ろうとする瑠衣の母・里美(奥貫薫)のことも、楠見くんと瑠衣を結びつけた大学の同級生・エリサ(太田莉菜)のことも、西園寺さんはお節介な愛で包み込み、共に生きる道を探そうとする。 そんな彼女の源泉は、幼い頃に母の美代子(高畑淳子)が突然家を出て行ってしまったこと。その理由について、家事が負担だったのかもしれないと思っていた西園寺さん。だからこそ彼女は家事を嫌い、家事を助けるアプリの制作に勤しんできたのだ。 だが、最終話で西園寺さんと美代子は再会。美代子は家事も育児も嫌いじゃないことを明かした上で、「母親だから」と心に蓋をしているうちに自分のやりたいことすらも分からなくなってしまったことが原因だと告げる。このドラマは家事すらも邪魔者扱いしなかった。 悪いのは家事じゃなく、大切であるはずの家族や自分の気持ちを蔑ろにすること。それに気づいた西園寺さんは周囲を巻き込み、ルカがムーってしない、かつ楠見くんと3人で暮らしていける道を模索する。偽大奥、偽大家族特番、偽修学旅行、偽リゾートバイト、偽日本代表など、みんなでワイワイ色んな方法を試す姿を見て、「ここに、このドラマが好きな理由が詰まってるな」と感じた。