《実は母親と同じくらい多い父親の産後うつ》「妻とは住む世界が変わってしまった」男性育休が進む影で相談できず孤立化…認知されづらい父親の憂鬱
パパだってつらいよ#1
厚生労働省が2022年に「産後パパ育休」を創設するなど、女性の社会進出とともに推進される父親の育児参加。しかし、制度の施行から2年が経ち、育児の現場では慣れない育児と仕事との両立などから、父親が心身の不調に陥るリスクが指摘され始めている。これまで「産後うつ=母親」という認識が強かったが、父親の産後うつとはどのようなものなのか。(前後編の前編) 【図を見る】実は産後うつが起きる割合は父親と母親でほぼ同じ割合だった
「奥さんの方が大変なのに」産後うつでも相談できなかった父親
「第一子誕生後、育児面で妻との経験や知識の差を感じて、自分だけ取り残されてしまったような孤独感と、自分なんて役立たずでいらない存在なんじゃないかっていう憂鬱な気分が続くようになっていきました」 そう語るのは、東京都杉並区に住む会社員男性Aさん(31)。現在は2児の父親として充実した日々を送っているが、第一子誕生後は慣れない育児と仕事との両立に苦戦し、産後うつを経験した。 コロナ禍の2021年10月、妻(28)との間に待望の長女が誕生した男性は妻の出産以前からパパ学級に参加し、人形を使ってオムツの替え方や沐浴の練習をしたり、ユーチューブで育児動画を視聴するなど、我が子を迎え入れるための万全の準備をしてきた。 さらに妻の出産後は2カ月間の育休を取得。妻と家事・育児を分担し、深夜も3時間おきに起床して台所でミルクを作るなど積極的に育児に関わった。しかし、復職後、慣れない育児と仕事との両立に苦戦し、次第に体調に異変を感じるようになった。 日中も育児を続ける妻との経験と知識の差をより深く感じるようになり、「妻とは住む世界が変わってしまった」ような気分に苛まれた。深夜も授乳担当だったが、疲労が重なり、次第に起きられなくなっていったという。 「起きられないなら私がミルクあげるから」 そんな妻の些細な一言が胸にグサッと突き刺さり、「自分はなんて役立たずなんだ」「俺はいらない存在なのではないか」と憂鬱な気分が長く続いた。そんな自身の異変に気づきつつも、友人に相談したり、心療内科に通うという選択が取れなかった。 「当時は、産後うつといったら母親がなるもので、父親がなるという認識は一切なかった。父親の自分がうつになったと言ったら『子どもを産んだ奥さんの方が大変なのに』『お前なんにも大変じゃないじゃん』っていう世間の目を気にしてしまって、情けなさもあって(悩みを)吐き出すことができなかったですね」(Aさん) 男性はストレスから帯状疱疹を発症。衛生面の問題から体調が整うまで妻子と別々の部屋で寝るようになり、少しずつ症状は改善。半年復職した後に再び育休を取得した。 仕事と距離を置き、時間にゆとりができたことで、心身の不調は改善していった。昨年次女が誕生した際にも、今度は長期での育休を取得。復職後も仕事量を調節し、育児に積極的に参加している。
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