投球するヤクルト・下慎之介

【球界ここだけの話】プロ野球界の秋は別れの季節である。ヤクルト・下慎之介投手（22）は、9月30日に球団から戦力外通告を受けた。育成4年目のシーズンを終えて届いた通知。「まだやりたいという気持ちはそこまでない。また違うこともやってみたい」と現役引退を示唆した。 2021年に群馬・健大高崎高から育成ドラフト1位で入団した左腕。22年夏には自らの意思でサイドスローに転向するなどもがいてきた。埼玉・戸田球場にはいつも、投手コーチと真剣な表情で会話しながら試行錯誤を続ける姿があった。4年間で1軍舞台に立つことはかなわなかったが、「去年から勝負だと思ってやっていたけど、無理だったみたい。いまはすっきりしています」。自分自身でやり切ったと思えるからこそ、表情はどこかすがすがしかった。 それでも、両親に伝えるときは、苦しさがあったという。元日には「今年は大事な年」と気にかけ、地元の「高崎だるま市」に一緒に足を運んでくれるなど常に支えてくれた家族。「両親に連絡したときは、ちょっと心にきちゃいました」と本音を吐露した。 今後については「未定」としたが、故郷に対する思いは強い。「友達が大きいですね、やっぱり。しんどいときに支えてくれたのは、いつも地元の友達だった」。大学でも野球を続ける中学時代の仲間と切磋琢磨（せっさたくま）。「よく僕がプロで野球をやっているおかげで、俺も大学野球を頑張れると言ってくれた」と照れくさそうに笑った。25年は大卒1年目となる学年。「同級生も来年から就職する人が増えてくる。草野球をやろうねっていう話もいっぱいしてくれている。なんか（チームを）つくろうかな。野球は大好きなので」と思い描いた。 ヤクルトで過ごした4年間を振り返り「自分の同級生や友達とは、また違ったいろんな経験をさせてもらった。それはこれからの人生にどう生かせるかわからないですけど、自分にとってはいい時間だった」と感謝した。「役所などきっちりした仕事もしてみたい。まだ若いし、楽しいこともいっぱいあると思う」。22歳の可能性は無限に広がっている。（武田千怜）